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はじめに:今年のプリツカー賞、注目の受賞者は?
建築界で最も栄誉ある賞の一つ、プリツカー建築賞。2025年の受賞者がついに発表されました。
- 結論: 2025年3月5日(日本時間)に発表された通り、今年の栄冠は中国・成都を拠点に活動する建築家、劉家琨(リュウ・ジャークン / Liu Jiakun)氏(1956年生まれ)に輝きました。
- 評価のポイント: 彼の建築は、その土地の歴史や文化、人々の暮らしに深く根ざし、現代的な課題に応えながらも詩的な空間を創り出す点が、審査員から高く評価されました。特に、一見相反する要素(伝統と革新、自然と人工など)を見事に融合させる手腕が注目されています。
- 意義: 中国国籍の建築家としては、2012年の王澍氏に次いで史上2人目の快挙となります。
この記事では、劉家琨氏がなぜ選ばれたのか、そして彼の代表的な建築作品について、もう少し詳しく見ていきましょう。
劉家琨氏とは? – 建築家であり、作家でもある
- 拠点: 中国・四川省の成都で自身の設計事務所「家琨建築設計事務所(Jiakun Architects)」を主宰しています。
- 経歴: 1956年生まれ。建築を学んだ後、チベットでの活動経験などを経て、1999年に事務所を設立しました。
- 特徴: 建築家としての活動と並行して、小説家としても知られています。この経験が、彼の建築に物語性や深い思考をもたらしているのかもしれません。
なぜ劉家琨氏が選ばれたのか? – 審査員が評価したポイント
審査員団は、劉氏の以下のような点を特に評価しています。
- 地域文脈の尊重: 建設地の歴史、文化、自然環境、そしてそこに住む人々の生活を深く理解し、敬意を払った設計を行います。
- 対極にあるものの融合: 「歴史と現代」「ユートピアと日常」「自然と人工」など、相反するように見える概念を結びつけ、新しい価値を持つ空間を生み出します。
- 素材への探求: 地域の伝統的な素材や工法を積極的に用いる一方で、四川大地震の経験から瓦礫を再利用した「再生レンガ」を開発するなど、革新的な試みも行っています。
- 人間中心の視点: 壮大さだけでなく、人々の日常的な営みやコミュニティを豊かにすることに重点を置いています。
- 社会的・環境的課題への応答: 現代社会が直面する様々な課題に対し、建築を通じて思慮深い回答を示そうとしています。
- 詩的な表現力: 彼の建築は、機能性だけでなく、空間が持つ詩的な響きや物語性を大切にしています。
注目すべき代表作品(URL付き)
劉家琨氏の哲学を体現するいくつかのプロジェクトをご紹介します。
- 胡慧姗記念館 (Hu Huishan Memorial)
- 四川大地震で亡くなった少女のための追悼施設。非常に小さな建築ですが、被災地の瓦礫を利用した再生レンガが使われるなど、記憶と再生への強いメッセージが込められています。
- 作品紹介 (ArchDaily): https://www.archdaily.com/31871/hu-huishan-memorial-liu-jiakun
- ウェストビレッジ・ベースヤード (West Village Yard / Chengdu West Village Basis Yard)
- 成都にある大規模複合施設。住宅、オフィス、商業施設、文化施設などが混在し、広大な中庭を中心に多様な活動を受け入れる、まさに「都市の縮図」のような場所です。地域コミュニティの活性化に貢献しています。
- 作品紹介 (Dezeen): https://www.dezeen.com/2016/01/29/liu-jiakun-architects-chengdu-west-village-basis-yard-china-bamboo-courtyard/
- サーペンタイン・パビリオン北京 (Serpentine Pavilion Beijing 2018)
- ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーが初めて国外(北京)で展開したパビリオンの設計者に選ばれました。伝統的な建築要素と現代的な構造技術を融合させ、国際的な注目を集めました。
- 作品紹介 (Serpentine Galleries): https://www.serpentinegalleries.org/whats-on/serpentine-pavilion-beijing-2018-designed-by-jiakun-architects/
おわりに
2025年のプリツカー賞を受賞した劉家琨氏。彼の建築は、グローバル化が進む現代において、改めて地域性や歴史、そして人間そのものに目を向けることの重要性を示唆しているように思えます。派手さや奇抜さではなく、静かな知性と深い洞察力に裏打ちされた彼の作品は、これからの建築のあり方を考える上で、多くのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
ぜひ、紹介したURLなどから、劉家琨氏の建築の世界に触れてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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