皆さん、こんにちは!建設業界の動向をウォッチしているいしいさんです。
本日、2025年5月13日、スーパーゼネコンの一角である大林組が2025年3月期の決算を発表しました。これがなかなかの好決算!売上高、利益ともに前期を大きく上回る結果となりました。
今回は、この大林組の決算内容を深掘りし、そこから見えてくる建設業界全体のトレンドや、私たち業界関係者がこれからどう動くべきかについて、考えていきたいと思います。
絶好調!大林組の2025年3月期決算ハイライト
まずは、今回の決算のポイントをざっくり見ていきましょう。
- 売上高: 約2兆6,201億円(前期比12.7%増)
- 営業利益: 約1,434億円(前期比80.7%増)
- 純利益(親会社株主帰属): 約1,460億円(前期比94.6%増)
いやー、すごい伸びですね!特に利益面の回復が著しいです。
好調の背景は?
- 国内建設事業が牽引: 国内の大型工事が順調に進んだことや、採算の良い案件が増えたことが大きな要因のようです。 政府の国土強靭化政策や企業のサプライチェーン見直しに伴う設備投資も追い風になっていると考えられます。
- 海外事業も貢献: 海外の土木事業で企業買収(MWH社)の効果が出ていることも、売上増に貢献しています。
- その他: 保有していた株式の売却益なども利益を押し上げました。
財務状況も安定
- 自己資本比率は38.1%と安定。
- 営業キャッシュ・フローもしっかりプラスを確保しており(約856億円 )、事業で稼ぐ力が強いことを示しています。
株主への還元は?
- 年間配当は1株あたり81円(中間40円、期末41円)と増配。
- 自己資本配当率(DOE)5.0%を目安とした安定配当を続ける方針です。
【注目】2026年3月期の業績はどうなる?大林組の次期予想を詳しく!
さて、好調だった2025年3月期ですが、気になるのは来期、つまり2026年3月期の見通しです。大林組は次のように予想しています。
- 売上高: 2兆5,600億円(2025年3月期実績比 2.3%減)
- このうち、不動産事業等で1,600億円を見込んでいます。
- 営業利益: 1,220億円(同 14.9%減)
- 経常利益: 1,260億円(同 17.9%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,000億円(同 31.5%減)
- 1株当たり当期純利益: 142円17銭
- 受注高: 2兆7,000億円(うち不動産事業等1,100億円)を見込んでいます。
2025年3月期と比較すると、売上・利益ともに減少する見通しですね。これは、建設物価の高止まりや国内外の経済情勢の不透明感などを慎重に織り込んだ結果と言えるかもしれません。特に純利益の減少幅が大きくなっている点が少し気になるところです。
一方で、株主還元については、年間配当金82円(1株あたり中間41円、期末41円)を予定しており、安定配当を継続する方針が示されています。
決算から見える建設業界のトレンドと考察
大林組の決算と次期予想は、単独の企業の動向だけでなく、現在の建設業界を取り巻く環境を映し出していると言えそうです。
- 国内市場は依然として底堅いが、成長には慎重な見方も: 公共工事、民間工事ともに需要は安定しているものの、爆発的な成長というよりは、安定期に入りつつあるのかもしれません。
- コスト上昇圧力は最大の経営課題: 原材料費や人件費の高騰は、利益を圧迫する最大の要因です。これが次期予想の減益にも影響していると考えられます。
- 海外展開の重要性と収益性確保の難しさ: 国内市場の先行きを考えると海外展開は不可欠ですが、利益を安定的に確保していくにはまだ課題も多そうです。
- DX・技術革新による生産性向上が急務: 人手不足が常態化する中、BIM/CIM活用やAI、ロボット技術などの導入による生産性向上は、企業の生き残りをかけた最重要課題です。大林組もこの分野への投資を継続する方針です。
- 資本効率と株主還元への意識の高まり: 政策保有株式の縮減を進め、得られた資金を成長投資や株主還元に充てるという流れは、今後他の企業にも広がっていく可能性があります。
私たち建設業界関係者はどう動くべきか?
今回の決算と次期予想を踏まえ、私たち建設業界に身を置く者は、以下のような点をより一層意識して行動する必要がありそうです。
- 国内市場の機会を確実に掴む: 底堅い市場環境を活かしつつも、利益率を意識した案件選別や、得意分野での競争優位性を高める努力が必要です。
- 徹底したコスト管理と価格交渉力の強化: サプライチェーンの見直し、VE提案、そして適切な価格転嫁のための粘り強い交渉がますます重要になります。
- 生産性向上のためのDX・新技術導入の加速: 待ったなしの状況です。情報収集だけでなく、具体的な導入計画と実行に移しましょう。
- 人材確保・育成と働き方改革の推進: 魅力ある職場環境づくりは、人材獲得競争を勝ち抜く上で不可欠です。
- サステナビリティ経営の深化: 環境配慮はコストではなく、企業価値向上の源泉と捉えるべきです。
- リスク管理と変化への適応力強化: 不透明な経済状況下では、将来を見据えたリスク分散と、変化に迅速に対応できる柔軟な組織体制づくりが求められます。
まとめ:慎重ながらも前向きな姿勢で未来へ
大林組の2025年3月期決算は力強いものでしたが、2026年3月期の予想はやや慎重な数字となりました。これは、現在の建設業界が直面する課題の大きさを物語っているとも言えます。
しかし、そのような中でも安定した株主還元を計画し、DXや技術革新への投資を継続する姿勢は、将来に向けた前向きな意志の表れでしょう。
私たち建設業界に関わる者も、目の前の課題に真摯に向き合い、変化を恐れずに新しい挑戦を続けることで、厳しい環境を乗り越え、業界全体の持続的な発展に貢献していく必要がありますね。
免責事項: この記事は、公表されている決算短信に基づいて作成されたものであり、特定の株式の購入や売却を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。