皆さん、こんにちは!建設業界の最新情報を追っているいしいさんです。
本日、2025年5月13日、大手ゼネコンの一角、大成建設株式会社からも2025年3月期の決算が発表されました!こちらも売上・利益ともに前期から大きくジャンプアップする、非常に力強い内容となりました。
大林組に続き、大成建設の決算も好調。これは業界全体にとって明るい兆しなのでしょうか?
今回は、大成建設の決算内容を紐解きながら、建設業界の”今”と、私たちが取るべきアクションについて考えていきましょう。
V字回復!大成建設の2025年3月期決算ハイライト
まずは、驚きの回復を見せた大成建設の決算ポイントです 。
- 売上高: 約2兆1,542億円(前期比22.1%増)
- 営業利益: 約1,201億円(前期比353.8%増!)
- 経常利益: 約1,345億円(前期比245.7%増)
- 純利益(親会社株主帰属): 約1,238億円(前期比207.5%増)
前期と比較して、特に利益面の伸びが凄まじいですね! まさにV字回復と言えるのではないでしょうか。
好調の背景は?
- 全セグメントで増収: 土木、建築、開発の全ての事業で売上が増加しました 。
- 利益率の改善: 特に土木事業と建築事業において、増収に加えて利益率が大きく改善したことが、営業利益の大幅増に繋がっています 。前期は建築事業が営業損失でしたが、今期は黒字転換しています。
- その他: 持分法による投資利益の増加や、投資有価証券の売却益なども利益を押し上げました 。
財務状況は?
- 総資産: 約2兆4,288億円(前期末比1,548億円減) 。現金預金等が減少しました 。
- 純資産: 約9,006億円(前期末比603億円減) 。自己株式の取得や株価変動に伴う評価差額金の減少などが影響しました 。
- 自己資本比率: 35.7%(前期末は36.0%) 。
資産・純資産は減少しましたが、有利子負債も減少しており 、財務の健全化を進めている様子がうかがえます。
キャッシュ・フローは?
- 営業活動: 売上債権の増加などにより、138億円の支出超(前期は406億円の収入超)。
- 投資活動: 投資有価証券の売却等により、105億円の収入超(前期は1,387億円の支出超)。
- 財務活動: 自己株式の取得等により、1,337億円の支出超(前期は1,093億円の収入超)。
営業キャッシュ・フローがマイナスになった点は少し気になりますが、投資キャッシュ・フローがプラスに転じ、財務活動で自己株式取得を進めているのが特徴的です。
株主への還元は?
- 年間配当金: 1株あたり210円(中間65円、期末145円)と大幅増配!(前期は130円)
- 配当性向(連結): 30.8%(前期は60.3%)
- 次期(2026年3月期)より新方針: 配当金 年150円を下限とし、業績が予想を上回れば配当性向30%に基づき上方修正する「下限付き配当性向30%」を導入。株主還元への強い意志が感じられます。
- 自己株式取得: 2024年11月から2025年3月末までに約720億円の自己株式取得を実施 。
【注目】2026年3月期の業績はどうなる?大成建設の次期予想を詳しく!
V字回復を遂げた大成建設ですが、来期(2026年3月期)の業績予想はどうでしょうか?
- 売上高: 1兆9,600億円(2025年3月期実績比 9.0%減)
- 営業利益: 1,010億円(同 15.9%減)
- 経常利益: 1,050億円(同 21.9%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 800億円(同 35.4%減)
- 1株当たり当期純利益: 487円61銭
- 年間配当金(予想): 1株あたり150円(中間75円、期末75円) 新方針の下限値を適用 。
- 受注高: 2兆600億円を見込んでいます 。
大林組と同様に、大成建設も来期は減収減益を予想しています。
売上高の減少に加え、利益率の低下も見込んでいるようです。
やはり建設コストの高止まりや国内外の経済の先行き不透明感が影響していると考えられます。
ただし、株主還元については「下限付き配当性向」という新しい方針を打ち出し、株主へのコミットメントを明確にしている点は注目に値します 。
決算から見える建設業界のトレンドと考察
大成建設の決算・次期予想からも、いくつかの業界トレンドや考察が見えてきます。
- 国内建設市場の堅調さと今後の不透明感: 企業の旺盛な設備投資意欲や公共投資に支えられ、市場は堅調ですが 、米国の政策動向などによっては企業の投資抑制懸念もあり、来期予想の慎重さに繋がっているようです 。
- コスト上昇への対応が最重要課題: 利益率改善は実現したものの、依然として労務需給の逼迫などが経営環境を厳しくしており 、コスト管理と価格転嫁が今後の収益性を左右します。
- 利益率改善への取り組み: 前期不振だった建築事業の利益率が改善したことは大きなポジティブ要素です 。今後、この改善を持続できるかが焦点となります。
- 株主還元と資本効率への強い意識: 大幅な増配、大規模な自己株式取得、そして「下限付き配当性向」の導入は、株主還元と資本効率改善への強い意欲を示しています 。政策保有株式の縮減目標(2026年度末までに連結純資産額の20%未満)も着実に進捗させています 。
- DX・技術革新の必要性: 資料内での直接的な言及は少ないものの、中期経営計画(TAISEI VISION 2030)ではDX推進や技術力強化が謳われており 、業界共通の課題として取り組んでいることがうかがえます。
私たち建設業界関係者はどう動くべきか?
大成建設の決算と戦略を踏まえ、私たち建設業界関係者が取るべき行動について、改めて考えてみましょう。
- 収益性重視の経営: 市場が堅調な中でも、安易な受注競争に陥らず、適正な利益を確保できる案件選別、コスト管理の徹底、価格交渉力の向上がより重要になります。
- 生産性向上への投資加速: 人手不足、コスト上昇に対応するため、DX、BIM/CIM、自動化・省人化技術への投資は不可欠です。導入効果を見極めながら、積極的に取り組むべきです。
- 人材確保・育成と働きがい: 魅力的な賃金・労働条件、スキルアップ支援、多様な人材が活躍できる環境整備など、選ばれる企業になるための努力が求められます。
- 資本効率の改善: 自社の資産(不動産、保有株式など)を見直し、有効活用や売却を通じて資本効率を高め、成長投資や株主還元に繋げる視点も重要です。大成建設の政策保有株縮減は参考になります 。
- リスク管理体制の強化: 経済の不確実性、資材価格変動、労務問題、さらにはコンプライアンス(大成建設はリニア関連の訴訟も継続中 )など、様々なリスクに備える体制が必要です。
- 顧客・社会への価値提供: 単に建物を造るだけでなく、脱炭素化、BCP(事業継続計画)、ウェルビーイングなど、顧客や社会が求める付加価値を提供できる提案力が差別化の鍵となります。
まとめ:課題を認識し、変革を進める力
大成建設の2025年3月期決算は、厳しい環境下での見事なV字回復を示すものでした。
特に利益率の改善と株主還元への積極姿勢が印象的です。
一方で、次期予想は慎重であり、建設業界が依然としてコスト上昇や先行き不透明感といった課題に直面していることを示唆しています。
「下限付き配当性向」という新たな株主還元方針 や、政策保有株の着実な縮減 など、変化への対応力や資本市場を意識した経営姿勢は、他の建設会社にとっても刺激となるでしょう。
私たち建設業界に携わる者も、この決算から学びを得て、生産性向上、人材育成、リスク管理といった課題に正面から向き合い、変革を進めていくことが、持続的な成長のために不可欠です。
免責事項: この記事は、公表されている決算短信に基づいて作成されたものであり、特定の株式の購入や売却を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。