こんにちは。
本日は、「大末建設株式会社」の2025年3月期決算と投資ポイントを解説します。
最近、大末建設が注目されています。これは、投資運用会社「fundnote株式会社」が運用し、著名投資家 井村俊哉氏も関わる投資助言会社「株式会社Kaihou(カイホウ)」が助言するファンドで、同社株の保有割合が増加したためです。
「fundnote株式会社」と「株式会社Kaihou」について
- fundnote株式会社: 2021年設立の投資運用会社。「投資を通じて日本を豊かに、人生をもっと豊かに」を理念に、個人向けアクティブファンド等を提供。IPO戦略や成長期待の日本企業投資に強み。
- 公式サイト: https://www.fundnote.co.jp/
- 株式会社Kaihou: 2023年設立の投資助言会社。「ニッポンの家計に貢献する」をミッションとし、竹入敬蔵氏と井村俊哉氏が代表。fundnote運用ファンドの一部に助言し、企業価値と市場価格の乖離(アルファ)追求による成果の家計還元を目指す。
- Kaihou社関連情報(fundnote社 お知らせページ): https://www.fundnote.co.jp/news/2024/12/25/10892/ (注: Kaihou社の独立した公式サイトは見当たりませんでした。上記はfundnote社による投資助言契約締結のお知らせページです。)
それでは、大末建設の事業概要と決算内容に移りましょう。
大末建設株式会社の事業概要
大末建設は、大阪と東京に本社を置く東証プライム上場の総合建設会社(ゼネコン)です。 1937年の創業以来、長年にわたり日本の社会基盤整備に貢献してきました。
主な事業内容
- マンション建設事業: 豊富な施工実績と高度な技術力を有し、業界でも有数の地位を確立しています。 多様なタイプのマンション建設に対応し、質の高い居住空間を提供しています。
- 一般建築事業: オフィスビル、物流施設、工場、医療・福祉施設、教育・文化施設、商業施設など、多岐にわたる建築物の設計・施工を手掛けています。 近年は大型冷凍・冷蔵倉庫といった特定分野の専門性も高めています。
- リニューアル事業: 既存建物の補修・増改築、耐震診断・補強工事等を通じて、建物の長寿命化と価値向上に貢献しています。
事業の強みと特徴
- 卓越した実績と技術力: 特にマンション建設においては、多くのデベロッパーから高い評価を得ています。 長年培ってきた施工品質、技術力、提案力が同社の大きな強みです。
- 幅広い対応能力: マンション建設で培った技術力を基盤に、多様な建築ニーズに応える総合力を有しています。
- 顧客との信頼関係: 「誠実をもってお客様の信頼を得る」という経営理念のもと、顧客との長期的な関係構築を重視しています。
- 人材育成への注力: 社員研修制度や資格取得支援制度を充実させ、専門性の高い人材育成を通じて組織全体の能力向上を図っています。
- 先進的な取り組み: 環境負荷低減に貢献する木造建築技術の開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、時代に即した挑戦を継続しています。
2024年3月期の連結売上高は778億円、従業員数は595名(2024年3月時点)。 国内主要都市に事業所を構え、グループ会社との連携により全国的に事業を展開しています。
2025年3月期 連結決算の概要
2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結決算は以下の通りです。
連結経営成績
- 売上高: 890億2700万円 (前期比 14.4%増)
- 営業利益: 36億9500万円 (前期比 132.4%増)
- 経常利益: 37億1000万円 (前期比 131.6%増)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 20億6000万円 (前期比 66.8%増)
全利益段階で前期を大幅に上回る増収増益を達成しました。 特に営業利益および経常利益は前期比2倍以上と顕著な伸びを示しています。 建設資材価格の高騰や人手不足といった課題があるものの、受注高が1,147億2700万円(前期比21.6%増)と好調に推移したことが、業績拡大に寄与しました。
財政状態およびキャッシュ・フローの状況
連結財政状態 (2025年3月期末)
- 総資産: 555億9500万円
- 純資産: 229億9300万円
- 自己資本比率: 41.4% (前期末38.2%)
総資産は若干減少しましたが、純資産は増加し、自己資本比率は3.2ポイント改善しました。 財務の安定性が向上していることがうかがえます。
連結キャッシュ・フロー (2025年3月期)
- 営業CF: △30億5900万円
- 投資CF: 8億800万円
- 財務CF: △20億6600万円
- 現金及び現金同等物 期末残高: 44億5800万円
営業キャッシュ・フローは主に仕入債務の減少によりマイナスとなりました。 投資キャッシュ・フローは投資有価証券の売却などによりプラスを確保しています。
株主還元について
配当の状況 (2025年3月期)
- 年間配当金: 99円00銭 (前期70円00銭)
- 中間: 44円50銭
- 期末: 54円50銭
- 配当性向 (連結): 50.1%
前期から29円の大幅な増配となりました。 配当性向は50.1%と、利益の約半数を株主に還元する方針を示しています。
投資指標から見る大末建設(PER・PBR)
企業の株価が割安か割高かを判断する代表的な指標として、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)があります。 ここでは、2025年3月期の決算数値と2025年5月20日時点の株価(2,105.00円)を基に、大末建設のこれらの指標を見ていきましょう。
- PER(株価収益率):
- 2025年3月期実績EPS(197.48円)に基づくPER: 約10.66倍
- 2026年3月期予想EPS(215.63円)に基づく予想PER: 約9.76倍 (参考:日本の建設業の平均PERは概ね12倍~14倍程度(2024年~2025年初頭情報))
- PBR(株価純資産倍率):
- 2025年3月期末BPS(2,200.96円)に基づくPBR: 約0.96倍 (参考:日本の建設業の平均PBRは1.1倍~1.2倍程度(2024年~2025年初頭情報))
考察:井村俊哉氏が注目した可能性のある「乖離(アルファ)」とは?
株式会社Kaihouは、「企業本来の価値と市場価格との乖離(アルファ)」を追求するとしています。 井村俊哉氏が大末建設の今回の決算内容から「アルファ」を見出したとすれば、どのような点に注目したのでしょうか。
- 経営姿勢の変化と株主還元の飛躍的向上: 今回の決算で特筆すべきは、単なる業績回復に留まらない、株主還元に対する明確な方針転換です。 年間配当金の大幅な増額(前期70円→当期99円、来期予想108円)に加え、「総還元性向50%以上かつDOE(自己資本配当率)4.0%以上」という具体的な数値目標を掲げた新配当方針の策定(決算短信P.3参照)は、企業が資本コストを意識し、持続的な株主価値向上へコミットする強い意志の表れと言えるでしょう。 井村氏は、こうした経営陣の意識改革や、それを具体的な行動で示す施策を重視する傾向があり、市場がこの変化の真の価値をまだ織り込んでいない部分に「アルファ」を見出した可能性があります。
- 「実績」と「計画」に裏打ちされた還元力: この株主還元強化は、単なる期待感だけではありません。 2025年3月期における営業利益・経常利益の前期比2倍超という顕著な業績回復(決算短信P.1参照)、そして自己資本比率の改善(38.2%→41.4%、決算短信P.1参照)といった財務基盤の強化が、その持続性を裏付けています。 さらに、受注高も前期比21.6%増(決算短信P.2参照)と好調であり、将来の収益への期待も高まります。 井村氏は、このような定量的な実績と将来計画の確度を深く分析し、現在の市場評価との間に「アルファ」が存在すると判断したのかもしれません。
- 中長期経営計画とPBR1倍割れの評価ギャップ: 新中長期経営計画「Road to 100th anniversary~飛躍への挑戦~」(決算短信P.3参照)では、「建築事業の強靭化」「高収益ポートフォリオの拡充」「経営基盤の次世代化」が掲げられています。 これらの戦略が着実に実行されれば、企業価値の一層の向上が期待されます。 しかしながら、現状のPBRは約0.96倍と1倍を下回っており、これは市場が同社の有する純資産価値や将来の成長ポテンシャルを、まだ十分に織り込みきれていない可能性を示唆しています。 井村氏は、この中長期的な成長性と現在の市場評価との間に存在する「アルファ」に着目したのではないでしょうか。
これらの要素が複合的に作用し、井村俊哉氏にとって大末建設は魅力的な投資対象と映ったと考えられます。 PERやPBRといった伝統的な指標から見て取れる割安感に加え、経営の質的な変化や将来への成長期待が、同氏の投資判断における「アルファ」の源泉となったと推察されます。
(注記)投資指標は常に変動し、業界や企業特性で適正水準も異なります。あくまで投資判断材料の一つとしてご活用ください。
今後の見通しおよび次期配当予想
次期連結業績予想 (2026年3月期)
- 売上高: 964億円 (当期比8.3%増)
- 営業利益: 35億2000万円 (当期比4.7%減)
- 経常利益: 33億5000万円 (当期比9.7%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 22億5000万円 (当期比9.2%増)
売上高および親会社株主に帰属する当期純利益は増加を見込んでいますが、営業利益および経常利益は、資材価格の高止まりや人件費の増加などにより減少を予想しています。 しかしながら、新中長期経営計画において「建築事業の強靭化」「高収益ポートフォリオの拡充」「経営基盤の次世代化」を推進し、収益改善と企業価値向上を目指すとしています。
次期配当予想 (2026年3月期)
- 年間配当金: 108円00銭 (予定)
- 中間: 54円00銭
- 期末: 54円00銭
来期も増配を予定しており、「総還元性向50%以上かつDOE4.0%以上」という新たな配当方針のもと、安定的な株主還元を目指す方針です。
まとめ
本日は、大末建設株式会社の事業概要、2025年3月期の決算内容、そして主要な投資指標について解説いたしました。
fundnote株式会社が運用し、株式会社Kaihouが投資助言を行うファンドによる株式保有で市場の注目を集める中、厳しい事業環境下でも大幅な増収増益を達成し、株主還元も強化している点が特筆されます。
PER・PBRといった指標からは株価の割安感も見られ、特に井村俊哉氏が着目したであろう経営の質的変化や株主還元への強いコミットメントといった「アルファ」の可能性についても考察しました。
今後の成長戦略と企業価値向上に期待が寄せられます。
※本記事は公開情報に基づき作成しており、特定金融商品の取引推奨を目的としません。投資判断はご自身の責任でお願いします。