独自の視点で建築を深掘り中!新しい発見があるかも?

【設計事務所向け】「図面だけじゃ食えない」は本当?建築知識をマネタイズする発想法

  • 2025年5月21日
  • 2025年5月14日
  • コラム

設計事務所を運営されている皆さん、 あるいはこれから独立を考えている設計者の皆さん。

日々の業務、本当にお疲れ様です。

クライアントの夢を形にし、美しい建築物を世に送り出す。 その情熱とやりがいは、何物にも代えがたいものがありますよね。

でも、一方でこんなホンネ、ありませんか?

「正直、設計料だけで事務所を回していくの、だんだん厳しくなってきたな…」 「もっとスタッフに還元したいけど、利益がなかなか…」 「新しい技術や働き方に対応したいけど、先立つものが…」

そうなんです。 「図面を描くだけ」で安定的に収益を上げ、事務所を成長させていくことが、 ひと昔前より難しくなっている。

そう感じている方は、決して少なくないはずです。

価格競争は激化し、求められる業務範囲は広がる一方。 それなのに、設計料はなかなか上がらない…。

でも、ちょっと待ってください。

僕たち設計者が持っている「建築知識」や「設計スキル」って、 実はとんでもない「お宝」なんじゃないでしょうか?

今はまだ、その価値を「図面」という形だけでしか マネタイズできていないだけかもしれません。

この記事では、そんな設計事務所が持つ「隠れた資産」を どうやって掘り起こし、新しい収益の柱に変えていくか、 その「発想法」について、一緒に考えていきたいと思います。


なんで「図面だけ」じゃ、しんどくなってきたの?

まず、なんでこんな状況になっちゃったんでしょうね。 いくつか理由がありそうです。

設計業務のコモディティ化の波:

CADが普及し、一定レベルの図面なら誰でも描ける時代になりました。 もちろん、僕たちの設計はそんな単純なものじゃない。

でも、発注者側から見れば、「図面作成」という部分だけが切り取られ、 安価なサービスと比較されやすくなったのは事実です。 AIによる設計支援なんて話も、もう他人事じゃありません。

発注者側のシビアなコスト意識:

景気の先行きが不透明な中、建築プロジェクトにかかるコストには、 ますます厳しい目が向けられています。

「相見積もりは当たり前」「とにかく安く」というプレッシャーは、 設計料にも容赦なく襲いかかってきます。

広がる業務範囲と責任:

昔ながらの「意匠設計」だけにとどまらず、 企画段階からの関与、各種申請業務の複雑化、省エネ計算、 積算、現場監理の高度化…。

「これ、昔は設計料に入ってなかったよな?」なんて業務が増えても、 なかなか追加料金を請求しづらい雰囲気、ありませんか?

人材確保と未来への投資:

若い才能ある人材を惹きつけ、育てていくには、 魅力的な労働条件や教育環境が必要です。 新しい技術やソフトへの投資も欠かせません。

でも、その原資はどこから…?

うーん、こうやって並べてみると、 ちょっと気が滅入ってきちゃいますね。

でも、だからこそ、新しい「発想」が必要なんです。


設計事務所に眠る「お宝」=建築知識と専門スキル

僕たち設計事務所が持っている最大の武器は、言うまでもなく 「建築に関する深い知識」と「高度な専門スキル」です。

これ、本当にすごいことなんですよ。

  • 法律や条例の知識: 建築基準法、都市計画法、消防法… 複雑怪奇な法規を読み解き、クリアする術。

  • 構造や設備の理解: 安全で快適な空間をつくるための、目に見えない部分への配慮。

  • 素材やディテールへのこだわり: 無数の選択肢の中から最適なものを選び出し、美しく納めるセンス。

  • 空間構成力とデザイン力: 人々の心を動かし、機能的で心地よい空間を生み出す創造性。

  • プロジェクトを動かす力: たくさんの関係者(施主、施工者、各種業者、行政など)と コミュニケーションを取り、複雑な工程をまとめ上げ、 プロジェクトをゴールに導くマネジメント能力。

  • 問題解決能力: 施主の漠然とした要望や、プロジェクト途上で発生する予期せぬ課題を、 専門知識と経験を駆使して解決していく力。

  • 地域とのつながり: 地元ならではの情報、キーマンとのネットワーク、長年かけて築き上げた信頼。

これだけの「お宝」、図面を描くためだけに使うなんて、 もったいなくないですか?

これらを別の角度から見つめ直せば、 新しいマネタイズの道がきっと見えてくるはずです。


「建築知識」を「カネ」に変える!マネタイズ発想アイデア集

じゃあ具体的に、どんなことができるんでしょう? ここではいくつかのヒントを。

「教える・伝える」で稼ぐ(コンサルティング・アドバイザリー業務)

  • 不動産活用コンサルティング: 「この土地、どう使ったら一番儲かる?」 「この古いビル、リノベしたらどんな可能性がある?」

    建築のプロの視点から、遊休不動産の有効活用や 既存建物のバリューアップ(価値向上)を提案。 単なる設計ではなく、「事業として成功させるため」の 川上からのアドバイスは、高い付加価値を生みます。

  • 事業企画・開発アドバイザリー: デベロッパーや一般企業が新しい事業を始めたいけど、 建築の知見がない…なんてケース、意外と多いんです。 事業の初期段階から参画し、コンセプトづくり、事業性評価、 法規チェック、デザイン監修などを担うことで、 設計業務とは別のフィーを得る道が開けます。

  • 専門特化型アドバイス: 「省エネ建築ならお任せ!」「古民家再生のプロです」 「災害に強いBCP建築の専門家」など、 事務所の得意分野を活かした専門コンサルティング。 ニッチな分野でも、深く掘り下げれば第一人者になれる可能性も。

  • インスペクション・建物診断: 中古物件の購入前調査や、既存建物の劣化診断など。 専門知識に基づいた的確な診断は、大きな信頼に繋がります。

「知識を売る」で稼ぐ(教育・情報発信事業)

  • セミナー・ワークショップ開催: 一般の方向けの「賢い家づくり勉強会」、 工務店向けの「デザイン力アップセミナー」、 学生向けの「設計課題攻略講座」など。 参加費や講演料が収益になりますし、 事務所のブランディングにも繋がります。

  • 書籍執筆・オンラインコンテンツ配信: 専門知識を分かりやすく解説した書籍を出版したり、 ブログやYouTube、noteなどで有料コンテンツを配信したり。 ファンが増えれば、そこから設計依頼やコンサル依頼に繋がることも。

  • 設計ノウハウの教材化: 事務所で培ってきた独自の設計手法やCADテクニック、 プレゼン資料のテンプレートなどを教材としてパッケージ化し、 販売するのも面白いかもしれません。

「モノを創って売る」で稼ぐ(プロダクト開発・販売)

  • オリジナル建材・家具のデザイン開発: 設計の思想を反映した、こだわりの建材 (タイル、照明器具、ドアノブなど)や家具をデザインし、 メーカーと組んで商品化。 ロイヤリティ収入や販売益が期待できます。

  • デジタルデータの販売: 高品質な3Dモデル素材、テクスチャ、設計図面テンプレート、 BIMライブラリなどをオンラインで販売。 世界中の設計者が顧客になり得ます。

「場を創って稼ぐ」で稼ぐ(事業投資・運営)

  • 小規模不動産開発・リノベーション再販: 思い切って自分たちが事業主となり、土地の仕入れから設計、 施工(または施工管理)、販売までを一貫して手がける。 リスクは伴いますが、成功すれば大きなリターンも。 設計事務所だからこそできる、デザイン性の高い 魅力的な物件を生み出せるはず。

  • デザインした空間を自ら運営: 設計したコワーキングスペース、カフェ、シェアハウスなどを 自ら運営し、家賃収入や運営収益を得る。 空間の魅力を最大限に引き出す運営ができるのは、 設計者ならではの強みです。


大事なのは、「本業の設計」とのシナジー

もちろん、いきなり全部やろう!というのは現実的じゃありません。

大切なのは、 「自分たちの事務所の強みは何か?」 「どんな顧客の、どんな悩みを解決できるか?」 をじっくり考え、本業である設計業務との相乗効果が見込める分野から、 小さく試してみることです。

新しい取り組みが本業の設計スキル向上に繋がったり、 逆に設計業務で得た知見が新しいマネタイズのヒントになったり。

そんな好循環を生み出せると理想的ですね。


マインドセットもアップデート!「儲けること」は悪じゃない

もしかしたら、設計者の中には 「お金儲けの話はちょっと…」と、 どこか清貧を良しとするような感覚があるかもしれません。

でも、適正な対価を得て、事務所が健全に経営され、 スタッフが安心して働ける環境があってこそ、 より良い設計活動が継続できるのではないでしょうか。

「図面だけじゃ食えない」という厳しい現実は、裏を返せば、 「建築知識の価値を再発見し、新しい可能性に挑戦するチャンス」 とも言えるはずです。

さあ、あなたの事務所に眠る「お宝」、どう活かしてみますか?

まずは所内で、こんな話を気軽にディスカッションしてみることから 始めてみてはいかがでしょうか。

設計事務所の未来は、僕たちが思っているよりも、 ずっと面白く、もっと豊かにできるはずですから。