住友不動産が2025年5月13日に発表した2025年3月期の決算短信。
皆さんはもうチェックしましたか?
この決算は、私たち建築・不動産業界にとって、これからどう進むべきか、とても大切なヒントが詰まっているんです。
住友不動産は、なんと4期連続で経常利益が過去最高を更新し、 12期連続で純利益も過去最高を記録しました。
これは、今の市場の変化にしっかり対応し、強い経営ができている証拠ですね。
決算のポイント:全部門で売上・利益がアップ!
今回の住友不動産の連結業績は、全ての数字が過去最高を記録しました。
- 売上高: 1兆142億円(前期より4.8%アップ)
- 営業利益: 2,715億円(6.6%アップ)
- 経常利益: 2,683億円(6.0%アップ)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,916億円(8.2%アップ)
特にすごいのは、全ての事業部門で売上も利益も増えたことです。
事業部門ごとの好調ぶり
- 不動産賃貸事業:やっぱり強い!安定した収益源
- 東京のオフィスビルが中心です。
- 既存ビルの稼働率が上がり、賃料も値上げできました。
- 新しい物件の入居も順調に進み、大きく売上と利益が増えました。
- 期末の空室率は5.8%と改善。働きやすいオフィスや事業拡大を考える企業の需要が、まだまだ高いことがわかります。
- 不動産販売事業:マンション販売が安定して好調
- 分譲マンションの販売が安定しています。
- この部門の営業利益も過去最高を記録しました。
- 契約戸数は前期より少し減りましたが、次の期の売上予定はほとんど確保済み。その次の期の契約も順調に進んでいます。
- 完成工事事業(ハウジング事業):付加価値の高い戦略が大当たり!
- 「新築そっくりさん」と注文住宅の事業です。
- 「高断熱リフォーム」やZEH(ゼロエネルギー住宅)など、環境性能にこだわった高付加価値商品の受注が絶好調でした。
- 1棟あたりの単価が上がったことで、業績に貢献しています。これは、お客さんが環境に優しい住宅を求めるようになっていることと、それに応える商品開発がとても重要だということを示しています。
- 不動産流通事業(ステップ事業):Webと人材への投資が実を結ぶ
- 仲介の引き渡し件数は減りましたが、取り扱い単価が上がったため、売上も利益も増えました。
- Web広告の強化や、人材への投資で営業体制を強化した取り組みがうまくいっています。
- 問い合わせ件数が増え、契約ベースの仲介収益も改善傾向にあります。
今期・来期の業績予想(見込み)
住友不動産は、これからも成長を続けると見ています。
2025年3月期(実績)
- 売上高: 1兆142億円
- 営業利益: 2,715億円
- 経常利益: 2,683億円
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,916億円
2026年3月期(予想)
- 売上高: 1兆300億円(前期より1.6%アップ)
- 営業利益: 2,900億円(前期より6.8%アップ)
- 経常利益: 2,800億円(前期より4.4%アップ)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 2,050億円(前期より6.9%アップ)
特にオフィスビル賃貸事業を中心に、売上も利益も増えると予想しています。 これで5期連続の経常最高益、13期連続の純利益最高益を達成する計画です。
株主還元にも力を入れています!
住友不動産は、株主への還元にも積極的です。
- 毎年増配を約束: 毎年15円以上の増配を続け、配当性向(利益に対する配当の割合)が35%になるまでこの方針を続けると発表しました。
- 「年間100円配」を前倒しで達成へ: 中期経営計画の2期目、つまり2027年3月期には、年間100円の配当を1年前倒しで達成することを目指しています。
- 自己株式の取得: 従業員向けの株式報酬制度のためや、保有している株を売って得たお金を使って、自社の株を買い戻しています。
建築・不動産業界の私たちが参考にすべきことと、今後の見通し
住友不動産の今回の決算から、私たち建築・不動産業界の皆さんが参考にすべき点はたくさんあります。
1. ストックビジネス(既存住宅の活用)への本気度とリフォーム市場の伸び
住友不動産は、「新築そっくりさん」と注文住宅事業を統合し、新会社「住友不動産ハウジング株式会社」を立ち上げました。
これは、これから伸びる既存住宅市場、特にリフォーム市場を大きく成長させる狙いがあるんです。
日本の住宅は、耐震性や断熱性が上がって、しっかりリフォームすれば長く使えるようになりました。 地球環境に優しくしようという視点からも、この流れはますます加速するでしょう。
今後のヒント:
- リフォーム・リノベーション事業を強化しよう!
- 新築の需要が頭打ちになる中で、既存住宅の価値を高めるリフォームやリノベーション事業は、これからますます重要になります。
- ただ直すだけでなく、高断熱化、省エネ化、スマートホーム化など、付加価値の高い提案をしていきましょう。
- 中古住宅流通との連携を深めよう!
- 中古住宅の流通が増えているのは明らかです。
- リフォームと中古住宅の売買を一緒に提供するワンストップサービスは、お客様にとって大きなメリットになります。
- 不動産流通業者との協力体制を強化したり、自社で流通部門を強化したりすることも考えてみましょう。
2. 環境性能を重視した商品開発は「必須」!
完成工事事業で「高断熱リフォーム」やZEH仕様の住宅が好調だったのは、お客様が住宅を選ぶときに、環境性能を重視するようになっている証拠です。
今後のヒント:
- ZEH・省エネ住宅への切り替えを急ごう!
- 今後、住宅の省エネ基準はさらに厳しくなるでしょう。
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やLCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)など、高い環境性能を持つ住宅の開発や提供は、もはや必須です。
- 補助金制度を積極的に活用・情報提供しよう!
- 国や地方自治体には、省エネ住宅に関する様々な補助金制度があります。
- これらの情報を積極的にお客様に伝えて、活用を促すことで、新しい仕事につながるチャンスが増えます。
3. デジタルマーケティングと人材育成の重要性
不動産流通事業でWeb広告を強化したり、人材への投資で営業体制を拡充したりしたことは、今のお客さんを獲得する上で、なくてはならない要素です。
今後のヒント:
- オンラインでの存在感を高めよう!
- お客さんが最初に情報を探すのはオンラインです。
- 自社のウェブサイトを充実させたり、SNSで積極的に情報を発信したり、SEO対策をしたりと、デジタルマーケティングへの投資は惜しまないでください。
- 営業担当者のスキルアップを支援しよう!
- デジタルツールを使いこなせるだけでなく、お客様のニーズを深く理解して、最適な提案ができる営業担当者を育てることは、競争力を高める上で非常に重要です。
- 特に、リフォームや中古住宅の分野では、専門知識と提案力が求められます。
- お客さん第一のサービスを提供しよう!
- お客様を第一に考えたブランド強化を目指す住友不動産販売の取り組みは、お客さんの満足度を高め、長く信頼される関係を築く上で大切でする。
4. オフィス市場の変化と多様な働き方への対応
東京のオフィス空室率が改善しているのは良いニュースですが、コロナ禍を経て多様な働き方が広がり、オフィスに求められる機能も変わってきています。
今後のヒント:
- フレキシブルオフィス・コワーキングスペースの検討:
- 大規模なオフィスだけでなく、スタートアップや中小企業向けのフレキシブルオフィスやコワーキングスペースの需要も高まっています。
- 既存の物件をリノベーションしたり、新しく開発したりする際に、これらのニーズを取り入れることで、新しい収益源を確保できるかもしれません。
- BCP対策と環境配慮型オフィス:
- 災害時の事業継続計画(BCP)対策や、環境に配慮したオフィス(LEED認証、CASBEE認証など)は、企業を誘致する上で重要な要素になります。
まとめ
住友不動産の今回の決算は、不動産市場の回復と、同社の戦略的な事業展開が実を結んだ結果と言えるでしょう。
特に、以下の点はこれからの建築・不動産業界で成功するためのカギとなります。
- 既存住宅市場への注力
- 環境性能の高い商品開発
- デジタルマーケティングと人材育成への投資
皆さんの会社でも、これらのトレンドを参考にしながら、持続的な成長を目指すための具体的な行動計画を立ててみてはいかがでしょうか。