2025年6月1日から、
建設現場のルールが大きく変わりました。
夏の厳しい暑さから作業員を守るための
「熱中症対策」
これが、法律上の「義務」になったのです。
これは、労働安全衛生法に基づく、 労働安全衛生規則が新しくなったためです。
これまでは
「できるだけ対策しましょう」
というお願い（努力義務）でした。
しかし、これからはルールを守らないと
罰則（6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金）
が科される可能性があります。
この記事では、
- なぜルールが変わったのか？
- 現場で具体的に何をすればよいのか？
を、どこよりも分かりやすく説明します。
なぜ対策が「義務」になったのか？
建設業は、他の仕事に比べて
熱中症になる人が非常に多いのが現実です。
国のデータを見ても、
熱中症で亡くなる人や仕事を休む人のうち、
建設業で働く人の割合が一番高いのです。
その理由の一つに、
「少しくらい体調が悪くても休みにくい」
という現場の雰囲気が考えられます。
工期が迫っていたり、
人手が足りなかったりすると、
どうしても無理をしてしまいがちです。
こうした状況から作業員を守るため、
国は対策を「義務」として、
ルールを強化することを決めました。
新しいルールのポイント
事業者が必ず守らなければならない
ルールのポイントは、以下の通りです。
対象となる環境:
- WBGT値（暑さ指数）が28℃以上
- または、気温が31℃以上
事業者の義務:
- 上記の環境で作業する場合、 熱中症の症状が出たときの対応 （作業を中断する、体を冷やす、病院へ連れて行くなど） をあらかじめ決め、 全員に知らせておく必要があります。
簡単に言うと、
「暑さの基準を超えたら、
決めたルール通りに対応してください」
ということです。
現場で実際に起きていること
「自分は大丈夫」
そう思っていても、熱中症は誰にでも起こります。
- 経験が長いベテランでも、 水分補給を忘れて作業に集中し、 倒れてしまうことがあります。
- 若い作業員が、 先輩に遠慮して体調が悪いことを言い出せず、 症状が悪化してしまうこともあります。
どちらも、大きな事故につながる危険なケースです。
現場ですぐにやるべき３つの対策
では、具体的に何をすればよいのでしょうか。
大切なポイントを３つ紹介します。
対策１：数字で作業環境を管理する
感覚ではなく、
きちんと数字を見て判断することが大切です。
- WBGT計（暑さ指数を測る機械）を置く
- 現場の事務所や休憩所など、 みんなが見える場所に置いて、 今の危険度を共有しましょう。
- 涼しい場所をつくる
- スポットクーラーやミストファンを使ったり、 日よけのネットを張ったりして、 作業場所を少しでも涼しくしましょう。
- 休憩場所の準備
- エアコンの効いた部屋や車を休憩用に用意し、 いつでも体を冷やせるようにします。
対策２：ルールを決めて休憩をとる
個人の判断に任せず、
現場のルールとして休憩をとりましょう。
- 作業時間を調整する
- 一番暑い昼過ぎの時間帯は、 作業を軽くしたり、中断したりすることを考えましょう。
- 時間を決めて休憩する
- 「1時間に1回、10分休む」のように、 時間を決めて全員で一緒に休憩をとるのが効果的です。
- 水分・塩分をとる
- スポーツドリンクや塩飴などを現場に用意し、 「喉が渇く前に飲む」ことを習慣にしましょう。
対策３：体調が悪い時に言いやすい環境をつくる
お互いの体調を気遣い、
報告しやすい雰囲気をつくることが重要です。
- 毎日の健康チェック
- 朝礼の時などに 「顔色は大丈夫？」「よく眠れた？」 とお互いに声をかけ合いましょう。
- 定期的な勉強会
- 熱中症の症状や、 人が倒れた時の対応について、 みんなで学ぶ機会をつくりましょう。
- 「休みやすい」雰囲気
- 体調不良を報告した人に対して、 職長やリーダーが「無理しないで休んで」と 声をかけるなど、休みやすい雰囲気をつくることが大切です。
まとめ
熱中症対策の義務化は、
罰則があるからやる、というだけのものではありません。
現場で働く仲間や従業員の安全を守るための
大事なルールです。
この新しいルールをきっかけに、
みんなが安全に、安心して働ける現場を
一緒に作っていきましょう。