前回の記事では、利用者が急増している 『相続土地国庫帰属制度』の概要について お話ししました。
詳しくはこちら↓
親から相続した土地… ありがたいはずなのに、 使い道がなくて困っていませんか? 遠すぎて管理できない山林や、 売ろうにも買い手がつかない田舎の土地。 固定資産税だけが毎年飛んでいく様子は、 まさに「マイナスの財産」ですよね。 これま[…]
「うちの土地も手放せるかも!」 と、希望を持たれた方も多いと思います。
ただ、その後、 たくさんの方からこんな質問をいただきました。
「この制度、デメリットはないの?」 「申請すれば、絶対引き取ってもらえる?」
そこで今回は【続編】として、 この制度を利用する前に必ず知っておくべき注意点を、 さらに深掘りして解説していきます。
便利な制度であることは間違いありませんが、 実は、誰でもどんな土地でも 簡単に手放せるわけではないんです。
【注意点①】最大の壁!そもそも「引き取ってもらえない土地」がある
これが一番の、そして最大のハードルです。
法律で決められたNG項目に一つでも当てはまると、 申請すらできなかったり、審査で落とされたりします。
あなたの土地は大丈夫か、チェックしてみましょう。
《申請前のチェックリスト! まずはコレを解消しよう》
- 建物がある土地
- → 「小さな物置くらい…」は通用しません! 完全に更地にする必要があります。
- 抵当権などがついている土地
- → ローンなどが残っている土地はNG。 権利関係をクリーンにする必要があります。
- 境界がハッキリしない土地
- → 「お隣さんとの境界線、ちゃんと決まってますか?」 境界が未確定だと申請できません。
- 他人が使っている土地
- → 隣人が通路として使っている、畑を貸している… といった土地は対象外です。
《審査でNGに…「管理が大変すぎる土地」》
申請はできても、国の現地調査などで 「これは管理が大変すぎる…」と判断されると、 不承認(お断り)となってしまいます。
- 危険な崖がある (崩落の危険がある急な崖など)
- 管理を邪魔するものがある (放置車両、大量のゴミ、荒れ放題の竹林など)
- 地下に何か埋まっている (昔の建物の基礎やガラなど)
【ポイント】
国が引き取るのは、あくまで 「スッキリきれいで、すぐに管理できる土地」 とイメージしておきましょう。
【注意点②】「20万円だけ」じゃない!見えないコストに要注意
次に、費用の話です。
国に納めるお金は、審査手数料(1.4万円)と 負担金(原則20万円)ですが、 本当に注意すべきは「見えないコスト」です。
- 建物の解体費用 → 数十万~数百万円
- 測量・境界確定費用 → 数十万円
- ゴミや樹木の撤去費用 → 数万~数十万円
これらはすべて、申請する前に、 自己負担でクリアしなければならない費用です。
「20万円で手放せるなら安い!」と飛びつく前に、 まずはこれらの準備費用がいくらかかるのか、 専門業者に見積もりを取ることを強くお勧めします。
【注意点③】意外な落とし穴!「誰でも」申請できるわけじゃない
この制度、申請できる人にも条件があります。
- 申請できるのは「相続した人」だけ
- → 売買で買った土地は対象外です。 あくまで相続で困っている人のための制度です。
- 共有地は「全員」での申請が必要
- → 兄弟などで土地を共有している場合、 一人でも「NO」と言う人がいれば申請できません。 事前に全員の足並みをそろえる必要があります。
【注意点④】時間もお金もかけたのに…「不承認」という結末も
これが、この制度の精神的にキツい部分かもしれません。
ここまでの注意点をすべてクリアし、 費用と時間をかけて準備しても、 最終的に「不承認」となるリスクはゼロではありません。
審査には半年から1年以上かかることも珍しくなく、 その間ずっと待ち続け、結果的にお金も時間も無駄になってしまう… という可能性も覚悟しておく必要があります。
じゃあ、どうすればいいの?
ここまで読むと、 「なんだか、すごくハードルが高い…」 と感じてしまったかもしれません。
でも、安心してください。 やるべきことはシンプルです。
- まず、ご自身の土地がNG項目に当てはまらないか、この記事でチェックする。
- もし当てはまるなら、解決にいくらかかりそうか、専門業者に見積もりを取ってみる。
- その上で、「これなら進められそう」と感じたら、管轄の法務局や司法書士に相談する。
一人で抱え込まず、まずは専門家の力を借りながら、 「自分の土地は、この制度を使えるのか?」 という点だけでもハッキリさせてみてはいかがでしょうか。
それが、長年の悩みを解決するための、確実な第一歩になるはずです。