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【続編】相続土地国庫帰属制度には”罠”も?申請前に知るべき4つの注意点

前回の記事では、利用者が急増している 『相続土地国庫帰属制度』の概要について お話ししました。
詳しくはこちら↓

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「うちの土地も手放せるかも!」 と、希望を持たれた方も多いと思います。

ただ、その後、 たくさんの方からこんな質問をいただきました。

「この制度、デメリットはないの?」 「申請すれば、絶対引き取ってもらえる?」

そこで今回は【続編】として、 この制度を利用する前に必ず知っておくべき注意点を、 さらに深掘りして解説していきます。

便利な制度であることは間違いありませんが、 実は、誰でもどんな土地でも 簡単に手放せるわけではないんです。


【注意点①】最大の壁!そもそも「引き取ってもらえない土地」がある

これが一番の、そして最大のハードルです。

法律で決められたNG項目に一つでも当てはまると、 申請すらできなかったり、審査で落とされたりします。

あなたの土地は大丈夫か、チェックしてみましょう。

《申請前のチェックリスト! まずはコレを解消しよう》

  • 建物がある土地
    • → 「小さな物置くらい…」は通用しません! 完全に更地にする必要があります。
  • 抵当権などがついている土地
    • → ローンなどが残っている土地はNG。 権利関係をクリーンにする必要があります。
  • 境界がハッキリしない土地
    • → 「お隣さんとの境界線、ちゃんと決まってますか?」 境界が未確定だと申請できません。
  • 他人が使っている土地
    • → 隣人が通路として使っている、畑を貸している… といった土地は対象外です。

《審査でNGに…「管理が大変すぎる土地」》

申請はできても、国の現地調査などで 「これは管理が大変すぎる…」と判断されると、 不承認(お断り)となってしまいます。

  • 危険な崖がある (崩落の危険がある急な崖など)
  • 管理を邪魔するものがある (放置車両、大量のゴミ、荒れ放題の竹林など)
  • 地下に何か埋まっている (昔の建物の基礎やガラなど)

 

【ポイント】

国が引き取るのは、あくまで 「スッキリきれいで、すぐに管理できる土地」 とイメージしておきましょう。


【注意点②】「20万円だけ」じゃない!見えないコストに要注意

次に、費用の話です。

国に納めるお金は、審査手数料(1.4万円)と 負担金(原則20万円)ですが、 本当に注意すべきは「見えないコスト」です。

  • 建物の解体費用 → 数十万~数百万円
  • 測量・境界確定費用 → 数十万円
  • ゴミや樹木の撤去費用 → 数万~数十万円

これらはすべて、申請する前に、 自己負担でクリアしなければならない費用です。

「20万円で手放せるなら安い!」と飛びつく前に、 まずはこれらの準備費用がいくらかかるのか、 専門業者に見積もりを取ることを強くお勧めします。


【注意点③】意外な落とし穴!「誰でも」申請できるわけじゃない

この制度、申請できる人にも条件があります。

  • 申請できるのは「相続した人」だけ
    • 売買で買った土地は対象外です。 あくまで相続で困っている人のための制度です。
  • 共有地は「全員」での申請が必要
    • → 兄弟などで土地を共有している場合、 一人でも「NO」と言う人がいれば申請できません。 事前に全員の足並みをそろえる必要があります。

【注意点④】時間もお金もかけたのに…「不承認」という結末も

これが、この制度の精神的にキツい部分かもしれません。

ここまでの注意点をすべてクリアし、 費用と時間をかけて準備しても、 最終的に「不承認」となるリスクはゼロではありません。

審査には半年から1年以上かかることも珍しくなく、 その間ずっと待ち続け、結果的にお金も時間も無駄になってしまう… という可能性も覚悟しておく必要があります。


じゃあ、どうすればいいの?

ここまで読むと、 「なんだか、すごくハードルが高い…」 と感じてしまったかもしれません。

でも、安心してください。 やるべきことはシンプルです。

  1. まず、ご自身の土地がNG項目に当てはまらないか、この記事でチェックする。
  2. もし当てはまるなら、解決にいくらかかりそうか、専門業者に見積もりを取ってみる。
  3. その上で、「これなら進められそう」と感じたら、管轄の法務局や司法書士に相談する。

一人で抱え込まず、まずは専門家の力を借りながら、 「自分の土地は、この制度を使えるのか?」 という点だけでもハッキリさせてみてはいかがでしょうか。

それが、長年の悩みを解決するための、確実な第一歩になるはずです。