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【判決】「契約書は後で」が悲劇に。330万円は返すべき?ある建築トラブルの話

  • 2025年6月19日
  • 2025年6月20日
  • コラム

家を建てる。 それは、とてもワクワクする一大イベントです。

でも、ちょっとしたボタンの掛け違いで、 大きなトラブルに発展してしまうことも…。

今回は、そんな「まさか」が起きてしまった、 ある建築裁判のお話です。

計画が途中で中止になった別荘づくり。

設計者が受け取った前払い金330万円を、 裁判所が「全額、返しなさい」と命じました。

設計者はもちろん「仕事をした分のお金だ」と主張しましたが、 その声は届きませんでした。

いったい、なぜ…? この話、家づくりを考えるすべての人に知ってほしい、 大切な教訓が隠されています。


ことの始まり:期待から生まれた新プロジェクト

神奈川県のある土地に、 一軒の別荘を建てようという計画が持ち上がりました。

依頼主は、ある広告会社です。

ただ、この計画は少し複雑なスタートでした。 というのも、最初に頼んでいた設計担当者が、 残念ながら急に亡くなってしまったのです。

そこで、後任として新しい設計者さんが紹介され、 プロジェクトを引き継ぐことになりました。

設計者さんはさっそく仕事にかかります。

  • 土地の調査
  • 簡単な図面(たたき台)の作成
  • 構造や設備の専門家との打ち合わせ

計画は、順調に進んでいるように見えました。

そして、設計者さんは当面の費用として、 330万円を依頼主に請求します。

依頼主も、このお金を支払いました。

…しかし、ここに大きな落とし穴があったのです。

実はこの時、両者の間で 正式な「設計・監理業務委託契約書」が交わされていませんでした。


突然の計画中止、そして裁判へ

お金が支払われた、まさにその翌月。 事態は急に変わります。

依頼主が、昔住んでいた別の別荘を買い戻せることになり、 「新しい別荘を建てる必要がなくなりました」 と設計者さんに伝えたのです。

計画は、ここで完全にストップ。

ここから話がこじれていきます。

年が明けて、依頼主は設計者さんを訴えました。 その主張は、こうです。

【依頼主の主張】 「そもそも正式な契約書がないのだから、契約は成立していない。  支払った330万円は、返すのが筋だ。」

これに対し、設計者さんも反論します。

【設計者さんの主張】 「頼まれて仕事をしたのだから、これは正当な報酬だ。  返す必要はない。」

さて、裁判所はどう判断したでしょうか?


裁判所の判断:「契約書がない」がすべて

結論から言うと、裁判所は依頼主の主張を全面的に認めました。

設計者さんは、行った業務に関わらず、 受け取った330万円を全額返さなくてはならなくなったのです。

その最大の理由は、たった一つ。 「書面による契約がなかった」ということです。

たとえ、 実際に打ち合わせをしていても… 図面を描き始めていても… お金のやり取りがあっても…

「設計」という専門的で高額な仕事においては、 ハンコを押した正式な契約書がなければ、 「法的な約束事とは認められません」と判断されたのです。

口約束や「よろしく頼む」という信頼感だけでは、 残念ながら法的な効力はなかった、ということになります。


この話から、私たちが学ぶべきこと

このお話、設計者さんにとっては、 あまりに厳しい結果だったかもしれません。

でも、ここから私たちは、 トラブルを避けるための大切なヒントを学べます。

教訓1:契約書は、お互いを守る「お守り」

「契約書」というと、なんだか相手を縛るような、 冷たいイメージがあるかもしれません。

でも、本当は逆です。

契約書は、 万が一のトラブルが起きたとき、 依頼主と設計者の両方を守ってくれる「お守り」なのです。

もし契約書があれば、 「途中で中止になった場合は、作業した分だけ支払う」 といったルールが書いてあったはず。

そうすれば、こんな裁判にはならなかったでしょう。

教訓2:「まあ、いいか」が一番こわい
  • 「信頼しているから、書類は後でいいや」
  • 「急いでるから、とりあえず始めちゃおう」

家づくりの現場では、そんな空気になることもあります。 でも、その「まあ、いいか」が、一番こわいのです。

これから家を建てる人も、つくる側の人も、 ぜひ覚えておいてください。

面倒でも、最初にきちんと契約書を交わす。

その一手間が、未来の安心につながり、 大切な夢と財産を守ってくれるのです。

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