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住宅着工、62年ぶり衝撃の低水準!何が起きてる?

 

 

2025年5月の住宅着工戸数が、前の年からなんと

34.4%も減って4万3237戸に。これは、1963年1月以来、62年ぶりの低い数字なんです

この衝撃的な数字が、建築業界、そして日本の住宅市場にどんな意味を持つのか、国土交通省の最新データを深掘りしながら、その背景と未来を探っていきましょう。


省エネ義務化の「反動」が大きすぎた?データが示す急ブレーキ

今回の着工数激減の最大の理由は、やはり

2025年4月から始まった省エネ基準適合の義務化です

  • 義務化前に、2025年3月には駆け込みで住宅着工が急増
  • 3月の新設住宅着工戸数は前年同月比39.6%増と大幅に伸びた
  • その反動が4月には26.6%減、そして今回の5月には34.4%減という形で現れた

 

この急ブレーキは、数字にもはっきりと表れています。

  • 注目すべきは「季節調整済みの年率換算値」。これは、毎月の変動(季節による増減など)を取り除き、もしその月の着工ペースが1年間続いた場合に、年間でどれくらいの戸数になるかを示す数字です。
  • 5月は529千戸となり、前月比15.6%の減少
  • 一時的な要因ではない、より本質的な市場の動きを捉えられる。

 

利用関係別の状況も深刻です。

  • 持ち家は前年同月比30.9%減
  • 貸家は30.5%減
  • 分譲住宅は43.8%減
  • 全ての利用関係で2ヶ月連続の2桁減少を記録
  • 特に分譲住宅では、マンションが56.5%減、一戸建住宅は29.9%減

 

まさに、新しいルールへの切り替わり時期特有の「反動」が、市場全体を冷え込ませていると言えるでしょう。


歴史的低水準の裏側にある構造変化と1963年

「1963年1月以来」という数字は、ただ古いだけでなく、当時の社会情勢を紐解くことで、より深くその意味を理解できます。

  • 1963年の日本: 高度経済成長期の真っただ中。経済は右肩上がりに成長し、人々の暮らしも豊かになり始めた時期。
    住宅需要は旺盛で、「家を建てる」ことが国民的な目標の一つでした。
    この時代背景において、一時的に着工数が低水準になったとすれば、それは経済状況や政策、あるいは季節的な要因が複合的に絡み合った結果であったと推測できます。
  • 1963年の世界: アメリカでジョン・F・ケネディ大統領が暗殺され、冷戦下で東西両陣営の緊張が高まっていた時代。こうした国際情勢も、間接的に経済や社会に影響を与えていた可能性も否定できません。

 

一方で、現在の状況は、根本的な社会構造の変化に加え、より構造的な問題が根底にあります。

  • 少子高齢化、人口減少
  • 資材価格の高騰
  • 建設業の人手不足

 

国土交通省のデータを見ると、全体の建築物の着工床面積も前年同月比で16.3%減

  • 特に居住用は37.3%減と大きく落ち込み、住宅着工の減少と連動
  • 一方で非居住用は27.2%増と、製造業用や倉庫などが大きく伸びている
  • これは、経済活動の多角化や物流需要の増加など、住宅以外の建設需要は一定程度存在していることを示唆。

住宅市場はどこへ向かうのか?

今回のデータは、住宅市場が大きな転換点に差し掛かっていることを明確に示しています。

  • 「量」から「質」への転換: 省エネ基準適合義務化は、まさにこの流れを加速させるもの。今後は、単に数を建てるだけでなく、より高断熱・高気密で、災害に強く、長く住み続けられる「質の高い住宅」が求められるようになるでしょう。
  • リノベーション・リフォーム市場の活性化: 新築着工が伸び悩む一方で、今ある家をもっと良くするリフォームやリノベーションの需要は増加する可能性。特に、省エネ基準に適合しない既存住宅の改修は、新たなビジネスチャンスを生むでしょう。
  • スマートホーム技術の普及: 省エネと快適性を両立させるためには、AIやIoTを活用したスマートホーム技術の導入が不可欠。これもまた、住宅市場に新たな付加価値をもたらす要素です。

 

今回の「62年ぶり」という数字は、確かにドキッとするものです。
しかし、これをただのピンチと捉えるのではなく、持続可能で質の高い住宅供給体制への転換期と考えることもできます。
私たち建築業界に携わる者は、この変化を前向きに受け止め、新しい価値観と技術を取り入れながら、未来の住まいづくりに貢献していく必要がありますね。


今回の住宅着工に関するデータは、国土交通省のウェブサイトで確認できます。

この着工数について、皆さんの周りではどんな影響が出ていますか?そして、これからの日本の住宅市場について、どんなことを期待しますか?ぜひコメントで教えてください!