大和ハウス工業が
2025年8月6日に発表した2026年3月期第1四半期決算短信を読み解き、建設・不動産業界の現状と今後の展望を考察します 。
増収も減益に。なぜ?
2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が1兆2,921億4千4百万円となり、前年同期比で0.4%増加しました 。
一方で、営業利益は1,181億1千6百万円(前年同期比3.1%減)、経常利益は1,119億3千9百万円(同6.2%減)となりました 。
この増収減益の背景には、経済の不透明さや資材価格の高騰、国内住宅市場の縮小があります 。特に、
商業施設事業では開発物件の売却が減り、売上高は前年同期比9.5%減、営業利益は18.5%減と大きく落ち込みました 。
また、マンション事業も営業利益が56.3%減となっています 。
各事業の明暗:注目すべき3つの事業
決算を詳しく見ると、事業によって明暗が分かれています。
- 戸建住宅事業:売上高は前年同期比3.8%増の2,355億7千4百万円と好調でした 。特に、米国事業が収益を支えており、東部・西部エリアの受注は計画を上回る水準で推移しています 。
- 賃貸住宅事業:売上高は前年同期比12.1%増の3,492億6千6百万円、営業利益は同33.8%増の380億7千6百万円と、各事業の中で最も高い成長率を記録しました 。これは、管理戸数の増加や高い入居率が要因です 。
- 環境エネルギー事業:売上高は前年同期比2.2%増、営業利益は同22.2%増と、こちらも好調でした 。脱炭素の流れの中で、再生可能エネルギー導入のニーズが高まっています 。
建設・不動産業者が学ぶべきこと
今回の決算から、日本の建設・不動産業界が今後目指すべき方向性が見えてきます。
- 海外事業の強化:国内住宅市場が縮小する中、海外への進出が収益の鍵となります 。大和ハウス工業のように、海外での事業拡大を積極的に検討するべきです。
- ストック事業への注力:新設住宅の着工が減る時代では、既存物件の再生やリノベーション、管理事業といったストック事業が重要になります 。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進:顧客体験の向上や業務効率化のために、DXは不可欠です 。大和ハウス工業も物流業務の省人化・自動化に取り組んでいます 。
- 環境エネルギー事業への参入:脱炭素のニーズは高まる一方です 。再生可能エネルギー発電所の設計・施工(EPC)や電力小売事業(PPS)など、新たな収益源として事業の多角化を視野に入れるべきでしょう 。
まとめ
大和ハウス工業の第1四半期決算は、資材価格の高騰や住宅市場の不調といった逆風を受けながらも、海外事業やストック事業、DXへの取り組みによって増収を達成した強みを示しています。国内市場に依存せず、新たな収益の柱を育てることの重要性が改めて浮き彫りになりました。