ERIホールディングス(6083)が2025年9月30日に発表した2026年5月期第1四半期(決算日:2025年8月31日)の連結決算は、増収増益という好調な結果となりました 。
この業績は、同社の努力だけでなく、建築・不動産業界全体が「省エネ義務化」と「ストック市場の拡大」という構造変化の途上にあることを示唆しています 。
決算データに基づき、業界関係者が考慮すべき戦略的な方向性を考察します。
目次
📊 決算概要:法改正と事業領域拡大が寄与
ERIホールディングスは、第1四半期に売上高、各利益で前年同期を大きく上回りました 。
【好調な要因の分析】
- 法改正の影響:2025年4月からの省エネ基準適合義務化に伴い、省エネ適合判定や住宅性能評価の交付件数が増加し、売上増に寄与しています 。
- M&Aによる拡大:M&Aによる事業拡大の効果が加わり増収となりました 。インフラストック及び環境関連事業は売上高で92.3%増を記録し、この事業領域への注力がデータに表れています.
💡 建築・不動産業界が考慮すべき戦略的方向性
この決算から読み取れる、業界が対応を求められている2つの主要な変化点と、それに対応する戦略を提案します。
1. 新築市場における「審査業務の効率化と専門性向上」
新設住宅着工戸数の落ち込みが見られる一方 、省エネ関連業務の増加により収益が増加していることから、今後は新築の「業務単価」が重要になります。
- 申請プロセスの体制整備:省エネ適合判定など、法改正に伴い増加した審査業務に対し、迅速かつミスのない申請体制の構築が求められます 。これは、物件の工期と回転率に直結する重要な要素です。
- 付加価値の提供:義務基準のクリアに加え、BELSなどの認証を活用し、高性能住宅としての差別化を図ることで、競争優位性を維持する戦略が有効です 。
2. 「建築ストック事業」へのリソース配分
ERIホールディングスはM&Aを通じて
建築ストック関連事業を強化しており、既存建築物の維持管理市場が今後の成長分野であると見ていることが分かります 。
- 定期報告・検査業務の確保:ERIが強化した、建築基準法第12条に基づく定期検査・調査業務は、継続的な収益源となり得ます 。管理物件や既存顧客に対するこの業務の確保は、事業の安定化に繋がります。
- コンサルティング機能の強化:インフラの老朽化や長寿命化のニーズに応えるため、リフォーム、環境関連のコンサルティングなど、既存物件の価値向上に資するサービスを事業の柱の一つに据えることが考えられます.
📊 業績予想:中期的な見通し
ERIホールディングスは、好調な第1四半期の実績を踏まえつつも、通期の連結業績予想(2026年5月期)は据え置いています 。
同社は、法改正と事業領域拡大による効果が通期で継続することを想定しており 、業界全体の構造的な変化が今後も継続することが予測されます。
市場の変化に対応するための戦略的な見直しと投資が、引き続き重要な経営課題となるでしょう。