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【上方修正】大林組(1802)2026年3月期 第2四半期決算

  • 2025年11月7日
  • 2025年11月7日
  • コラム

📅 決算発表の基本情報

  • 発表日: 2025年11月5日
  • 中間期: 2025年4月1日 〜 2025年9月30日

📈 業績サマリー:売上微減でも「利益」が過去最高水準!

今期の特徴は、「売上高は減少したが、利益は大幅に増加した」という点です。
これは、収益性を重視した経営戦略が成功したことを示しています。

連結経営成績(対前年中間期増減率)

項目 2026年3月期 中間期 (百万円) 対前年増減率 (%) キーポイント
売上高 1,161,287 -5.0 国内建築での大型案件反動減
営業利益 80,077 +78.0 採算性向上で大幅増益
経常利益 84,547 +72.2 営業利益とほぼ同様の伸び
親会社株主に帰属する中間純利益 77,967 +42.9 過去最高水準の純利益

🎯 利益急増の要因はどこにあるか?

増益の背景には、主に以下の二大要因があります。

1. 国内建築事業の収益力強化

  • 追加変更工事の獲得:国内建築事業における追加変更工事獲得。
  • 採算性の良い案件の寄与増:採算性の良い案件の寄与度が高まったこと。

2. 不動産事業の成功

  • 開発物件の売却:不動産事業における開発物件の売却などによる。
  • 売上高:前年同期比 104.1%増の456億円
  • 利益貢献度:営業利益は前年同期比 100.6%増の97億円
事業区分 営業利益 (百万円) 前年同期との比較
国内建築 38,550
海外土木 6,318 子会社の順調な手持ち工事の進捗が寄与
不動産事業 9,738 +100.6% の大幅貢献
建設事業計 68,009 +76.6% の増益

⚙️ 財務戦略:資本効率の向上を加速

1. 財務体質の改善

  • 自己資本比率: 前連結会計年度末38.1%から 40.7% へと上昇しました。
  • 純資産: 親会社株主に帰属する中間純利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより、1兆2,255億円に増加しました。

2. 政策保有株式の縮減目標達成へ

非効率な資産を売却し、資本効率を高める動きが加速しています。

  • 現状の比率: 連結純資産に対する保有残高の割合は 22.2% (2025年9月末時点)。
  • 目標: 2027年3月末までに 20%以内
  • 売却合意済額反映後の比率: すでに売却合意済みの金額を差し引くと、比率は 16.6% に低下します。

売却資金は、人材・DX・技術への成長投資戦略的な株主還元に充当されます。


💡 建築・不動産業者が取るべき「次の一手」

大林組の決算は、厳しい市場環境下で利益を生み出すための戦略的ヒントに満ちています。

1. 経営資源は「高採算案件」に集中せよ

確実に利益が出る案件に施工キャパシティを集中すべきです。

  • アクション: 受注前のリスク評価と価格設定を厳格化し、現場段階での追加工事獲得(設計変更)交渉力を強化する。

2. 不動産開発事業を「収益の柱」に育てよ

請負ビジネス(建設)が安定収益を担いつつ、不動産開発・売却(デベロップメント)を変動性の高い収益源として活用する経営構造を築く。

  • アクション: 優良な開発用地の確保に注力し、市況を機敏に捉えた売却戦略を立てる。

3. 非効率資産を売って「未来」に投資せよ

政策保有株式の縮減に見られるように、企業価値向上に直結しない資産は積極的に売却すべきです。

  • アクション: 売却で得た資金を、今後の競争優位の鍵となるDX、技術革新、そして優秀な人材の獲得・育成へ振り向ける。

🚀 2026年3月期 通期業績予想(上方修正!)

中間期の好調を受け、大林組は通期の連結業績予想を上方修正しました。これは、下期に向けても国内建築・海外建設子会社ともに収益改善が見込まれているためです。

項目 修正後 通期予想 (百万円) 対前回発表増減率
売上高 2,570,000 +0.4%
営業利益 165,000 +35.2%
親会社株主に帰属する当期純利益 149,000 +49.0%

最終利益が約5割増となる予想は、業界内での大林組の際立った収益力を示しています。


📝 まとめ

大林組の決算は、建設・不動産業界の未来を示す明確なメッセージです。

🔑 経営成功の3つの鍵

  1. 収益力の極大化:売上を追わず、国内建築の「採算性向上」と不動産開発による「高収益源の確保」を徹底。
  2. 資本効率の追求:政策保有株式の縮減を進め、非効率な資産を整理。
  3. 未来への投資:売却資金をDX、技術、人材といった「競争優位」を確立する分野へ再投下。

この戦略的な転換が、最終利益が約5割増という大幅な通期業績予想の上方修正という結果につながっています。

私たちがこの難局を乗り越え、持続的な成長を目指すには、この「量より質」「非効率な資産からの卒業」という経営指針を参考に、戦略を見直すことが不可欠です。