ゼネコンは売上規模こそ大きいが、薄利多売の構造から抜け出せない。
こうした投資家の固定観念を、業界最大手の一角である大成建設が鮮やかに塗り替えようとしています。
同社が発表した2026年3月期 第3四半期決算。
そこには、一見すると不可解な、しかし恐ろしいほどの強さを物語る数字が並んでいました。
1. 「売上減少」を歓迎する、異次元の決算数値
まずはこの矛盾するような数字を見てください。
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売上高:1兆4,277億円(前年比 6.5%減)
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営業利益:1,223億円(前年比 53.0%増)
売上が1,000億円近く減っているのに、本業の儲けは1.5倍に爆増。
この「筋肉質な成長」の裏には、従来の受注競争から決別し、収益性を徹底追求する同社の冷徹な戦略転換があります。
2. 建築の「外科手術」と土木の「圧倒的集金力」
今回の増益を牽引したのは、長年の課題だった建築事業の構造改革です。
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建築事業:売上は13%減。しかし、利益は110億円から456億円へ(314%増)。 あえて「売らない」選択をする選別受注により、不採算案件を一掃。利益率を正常化させました。
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土木事業:完成工事総利益率 20.6%。 20%を超える驚異的な粗利を維持。この安定した稼ぐ力が、建築の構造改革を断行するための最強のセーフティネットとなっています。
3. 「海」を飲み込み、労働力不足をハックする
将来の成長基盤として、東洋建設を完全子会社化。これは単なる規模拡大ではありません。
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領域の拡大:陸の大成 + 海の東洋。洋上風力発電などのブルーオーシャンを独占する狙い。
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2024年問題への回答:省人化技術とリソースの統合により、業界最大の壁である労働力不足を突破します。
のれん償却費として年間120億円規模のコストが発生しますが、それを上回る「相乗効果」を早期に発現できるかが次の焦点です。
4. 795億円の「隠し財産」を解き放つ資本効率
取引先との「なあなあ」の関係も終わらせる。その決意は政策保有株式の縮減ペースに現れています。
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すでに795億円分の株式が売却応諾済み。 これは事実上の潜在的なキャッシュであり、将来の事業投資やさらなる株主還元へと充当される確約された資金です。
5. 株主への強烈な還元:EPSは34%アップ
利益の拡大と、発行済株式の約1割にも及ぶ大規模な自己株式消却。この「ダブルエンジン」により、投資家指標は劇的に改善しました。
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1株当たり利益(EPS):457.17円 → 615.38円(34.6%増)
さいごに
2030年に向けた変革の現在地 大成建設は今、単なる建設会社から、収益性と資本効率を統御する高効率な投資対象へと脱皮しました。 「営業利益率10%以上を新たな業界標準にできるか」 伝統的な巨大企業が自らを作り変えようとする、その執念とも言える次の一手に注目です。