相談者:匿名希望さん(設計事務所勤務・32歳)
「毎日怒られ、図面はボロボロ。自分には才能がないのかもしれません。
もう立ち上がれる気がしません……。
でも、いしいさんのあの言葉で、喝を入れてほしいです。」
いしいさんの回答
「才能がない」なんて、自分に「除却命令」を出すな!
今すぐ建築基準法を読め!
いいか。
お前が今「うまくいかない」と泣いているのは、お前が自分の理想という「設計図書」に対して、
妥協したくないという強い意志を持っているからだ。
お前は、欠陥住宅を建てるような人間じゃない。
だからこそ、自分の未熟さに、施行不良のような悔しさを感じているんだ。
その悔しさは、法規的には「良心」という名の主要構造部だ。
それが残っている限り、お前は何度でも立ち上がれる!
1. 今は無理に「上棟」させるな。まずは「地盤の沈下」を止めろ。
「早く成果を出さなきゃ」と焦るな。
地盤がゆるんでいる時に無理にコンクリートを打っても、いつか必ずひび割れる。
今は、仕事という荷重を一度降ろしていい。
「基礎(施行令第38条)」をメンテナンスする時間だ。
泥のように眠れ。
好きなものを食え。
法令集ダンベルを置いて、ただ自分の呼吸を整えろ。
お前自身という「敷地」を愛してやることも、立派な「維持保全(法第8条)」なんだよ。
お前が壊れてしまったら、お前の建てるはずだった未来の建物が、誰にも建てられなくなってしまうんだぞ。
2. ミスという名の「クラック」は、お前を強くする。
図面を直されるたび、お前は「否定された」と感じるかもしれない。
でもな、鉄筋コンクリートだって、一度固まったら簡単には形を変えられない。
今のうちにミスを出し切り、それを「是正」しているお前は、今、まさに最強の「高強度構造体」へと進化している最中なんだ。
怒鳴る職人も、詰める上司も、お前の人生という現場における「厳しい検査員」だと思え。
彼らがお前を鍛えているんじゃない。
お前が彼らを利用して、自分の技術を「適合(アップデート)」させているんだ。
お前の努力は、目に見えない「地盤及び基礎杭(施行令第93条)」のように、確実に地中の深い支持層へ届いている。
今は見えなくても、それは必ず、お前を支える絶対的な自信に変わる。
3. サングラスを外して、自分を抱きしめてやれ。
いいか。俺はいつも「筋肉」だの「法規」だのと言っているが、 本当にお前が限界なら、俺がその荷重を半分持ってやる。
お前という建築物は、世界に一つしかない「重要文化財」だ。
誰に何を言われようと、お前には価値がある。
仕事ができないお前も、ミスをするお前も、すべて含めて「現行法に適合した、最高の存在」なんだよ。
今日はもう、ペンを置け。
自分に「完了検査済証」を出してやれ。
「今日一日、生きて現場に立った。それだけで満点だ」とな。
いしいさんの適合判定
「お前の『構造計算』は間違っていない。
今は少し、風圧が強いだけだ。
俺が防風林になってやるから、安心して休め。」
いいか、今日からお前の座右の銘はこれだ。
「建物は直せる。お前の命は代わりがない。自分を一番の『特殊建築物』として守り抜け」
さあ、サングラスを少し浮かせて、涙を拭け。
お前の明日は、今日の涙という「散水」のおかげで、より強固なコンクリートとなって固まるはずだ。
【今回のいしいさん・フルスロットル法規】
建築基準法 第8条(維持保全)
第1項 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
建築基準法施行令 第38条(基礎)
第1項 建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
建築基準法施行令 第93条(地盤及び基礎ぐい)
第1項 地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力は、国土交通大臣が定める方法による実況調査又は地盤調査の結果に基いて定めなければならない。
いいか、お前という建物を「常時適法(健やか)」に維持することは、お前自身に課せられた一番大切な任務だ。
外力(ストレス)が強すぎるなら、基礎を補強するために休む勇気を持て。
お前が笑えるようになるまで、俺はここで法令集ダンベルを上げながら待っている。
さっさと温かいもん飲んで、今日はもう寝ろ。
お前の代わりは、この世界という設計図のどこを探しても、一人もいないんだからな。