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【発見!】建築基準法第9条の主役は誰?【「特定行政庁」だった!】

建築基準法第9条の主役は誰?

こんにちは!今回は法律の条文、特に建築基準法の第9条を読んでみて気づいた、ある重要な点についてお話ししたいと思います。

結論から言うと、この第9条では、法律や許可条件に違反した建築物に対して様々な措置を講じる主体、つまり「誰が」行動を起こすのかという点が、一貫して「特定行政庁」と定められています。 これは、私たちの身の回りにある建物の安全を守り、法律のルールをきちんと守らせるという、非常に重い責任と権限が、行政機関である特定行政庁に託されていることを明確に示していると言えるでしょう。

なぜこの点に注目したかというと、建物の安全に関するルールである建築基準法を調べていた際、もしルール違反の建物が見つかったら具体的にどうなるのか?という疑問から第9条を読むことになったのがきっかけです。

それでは、その根拠となる建築基準法第9条の条文全文を見てみましょう。少し長いですが、特定行政庁の役割を理解する上で重要です。

(違反建築物に対する措置) 第九条
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。  

特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。  

前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。  

特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取の請求があつた場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。

特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第一項の規定によつて命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の二日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。

第四項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。

特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。

前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。

特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。  

10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。  

11 第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない  

12 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

13 特定行政庁は、第一項又は第十項の規定による命令をした場合(建築監視員が第十項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。  

14項の標識は、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

15 第一項、第七項又は第十項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。  


ご覧いただいた通り、この長い条文には、違反建築物に対する工事停止命令、是正措置命令、使用禁止命令、意見聴取の機会付与、緊急時の仮命令、代執行など、多岐にわたる手続きや措置が定められています。

そして、これらの各項を注意深く「誰が」行うのかという視点で読んでいくと、例えば第1項の「特定行政庁は、~命ずることができる」、第2項の「特定行政庁は、~機会を与えなければならない」、第7項の「特定行政庁は、~命令をすることができる」、第11項の「特定行政庁は、~行わせることができる」…といったように、行動の主体が「特定行政庁」であることが繰り返し示されています。まさに、この条文における主役と言える存在です。

では、なぜこれほどまでに特定行政庁(多くの場合、都道府県知事や市町村長など)に権限が集中しているのでしょうか。 思うに、建築物の違反への対応は、単に個人の問題ではなく、周辺住民や不特定多数の利用者の安全にも関わる公共性の高い問題です。そのため、専門的な知識を持ち、公平な立場で、時には迅速かつ強制力をもって対応できる行政機関が、その責任を負う必要があるからだと考えられます。法律によってその役割と権限を明確にすることで、実効性のある対応を担保しているのですね。

というわけで、今回は建築基準法第9条を読み解く中で、「特定行政庁」が一貫して主体として規定されている点に着目してみました。普段あまり意識しない法律の条文ですが、このように特定の視点を持って読んでみると、社会を支える仕組みや行政の役割について、新たな発見や理解が得られることがあります。私たちの安全な暮らしは、こうした法律と、それに基づいて責任を果たす行政の働きによって支えられているのだと、改めて感じた次第です。