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【なぜ?】地下街と非常用エレベーター:共通の「30m」ルール

こんにちは!

普段、私たちが何気なく利用している地下街や高層ビル。
これらの施設の安全性は、建築基準法という法律によって厳しく規定されています。
今日は、その中でも一見すると関連が薄いように思われる「地下街」と「非常用エレベーター」に関する規定に、実は「歩行距離30m」という興味深い共通点があることをご紹介します。

根拠となる条文を見てみよう

まずは、それぞれの条文を確認してみましょう。

1. 地下街に関する規定(建築基準法施行令 第128条の3)

(地下街) 第百二十八条の三 地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)の各構え(店舗等の区画をいう。以下同じ。)は、次の各号(第三号を除く。)に該当する地下道(地下に設けられた道で、公衆の通行の用に供するものをいう。以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。(後略)

一~三 (略)

四 長さが六十メートルをこえる地下道にあつては、避難上安全な地上に通ずる直通階段(その構造が第二十三条第一項の表の(二)に適合するものに限る。)(中略)各構えの接する部分からその一に至る歩行距離が三十メートル以下となるように設けていること。

2・3 (略)

4 地下街の各構えの居室(居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。以下同じ。)の各部分から地下道(当該居室の各部分から直接地上へ通ずる通路を含む。)への出入口の一に至る歩行距離は、三十メートル以下でなければならない。

この第128条の3では、大きく2つのケースで「歩行距離30m以下」が定められています。

  • 第1項第四号: 長さ60mを超える地下道の場合、店舗などの区画(構え)から地上へ避難するための直通階段までの歩行距離を30m以下にすること。
  • 第4項: 店舗などの区画(構え)内の居室の各部分から、地下道または地上への通路の出入口までの歩行距離を30m以下にすること。

これらは、火災などの緊急時に、人々が迅速かつ安全に地上や避難経路へ到達できるようにするための規定です。

2. 非常用エレベーターに関する規定(建築基準法施行令 第129条の13の3)

(非常用の昇降機の設置及び構造) 第百二十九条の十三の三 法第三十四条第二項の規定による非常用の昇降機は、エレベーター(以下「非常用エレベーター」という。)とし、その設置及び構造は、第百二十九条の四から第百二十九条の十までの規定によるほか、この条に定めるところによらなければならない。

1~4 (略)

5 避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)においては、非常用エレベーターの昇降路の出入口(第三項に規定する構造の乗降ロビーを設けた場合には、その出入口)から屋外への出口(道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路、空地その他これらに類するものに接している部分に限る。)の一に至る歩行距離は、三十メートル以下としなければならない。

一方、第129条の13の3 第5項では、避難階(直接地上へ出られる階)において、非常用エレベーターの乗り場から屋外の安全な場所への出口までの歩行距離が30m以下になるように定められています。
こちらも、避難者や消防隊が迅速かつ安全に移動できるようにするための規定と言えます。

なぜ「30m」なのか?

「地下街」と、高層ビルの「非常用エレベーター」。
場所も目的も異なるこれらの施設に対して、同じ「歩行距離30m」という基準が設けられているのはなぜでしょうか。

法令に明確な理由は記されていませんが、一般的に以下のような点が考えられます。

  • 避難行動における限界距離: 火災時の煙や停電による視界不良、パニックといった状況下でも、人々が比較的安全に目的地(避難階段、屋外出口、エレベーター乗り場など)へたどり着ける現実的な距離として、「30m」が一つの目安とされている可能性があります。
  • 避難時間の短縮: 30mという距離は、一般的な歩行速度であれば数十秒程度で移動できます。避難開始から安全な場所への到達時間を短くすることで、人々の安全確保の可能性を高める狙いがあると考えられます。
  • 消防活動の効率化: 特に非常用エレベーターの場合、消防隊が装備を携行して迅速に活動を開始するためには、エレベーター乗り場から屋外へのアクセスが良い(距離が短い)ことが重要になります。

このように、状況は異なっても「いかに迅速かつ安全に避難・活動できるか」という共通の目的のために、「30m」という具体的な数値基準が設けられていると言えるでしょう。

まとめ

建築基準法施行令には、私たちの安全を守るための様々な規定が盛り込まれています。
今回注目した「歩行距離30m」は、地下街と非常用エレベーターという異なる条文に共通して見られる、避難経路の確保における重要な考え方を示しています。

普段利用する建物で、「避難経路はこちら」といった表示を見かけることがあると思います。
ぜひ一度、その経路や距離に注目してみてください。
私たちの安全が、こうした細やかな規定によって支えられていることを実感できるかもしれません。

ちなみに、31mについてはこちら↓をどうぞ!

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