設計では、居室の明るさ、つまり採光はとても大事ですよね。
建築基準法でも、第28条で居室には光を取り入れる窓などをつくるよう決められています。
でも、建物の使いみちによっては、
「ここは窓がなくてもOK」
となる特別な居室があるんです。
今回は、そんな「採光のための窓がなくてもよい居室」について、
平成7年に出された建設省からのおしらせ(建設省住指発第153号)をもとに、
どんな居室が当てはまるのか、設計のヒントになるように見ていきましょう。
これを知っておくと、もっと使いやすくて自由な設計ができるようになるかもしれません。
1. 温度や湿度を きっちり管理する必要がある作業室
まず、法律(法第28条第1項ただし書)で
「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」
とされているのは、こんな場所です。
- 大学や病院などにある実験室や研究室、薬を調合する調剤室みたいに、 温度や湿度をしっかり管理しながら作業する居室。(ただ、小中学校の生徒が使う実験室はこれには入りません。)
- 手術室。
- レントゲン(エックス線)撮影室みたいに、 こまかい機械で検査や治療をする居室。
- とくに厳しい温度や湿度の管理がいる治療室や、 生まれたばかりの赤ちゃんがいる新生児室などです。
こういった居室は、専門的な使い方をする上で、
居室の環境を正確に保つことがとても大切なので、
光を取り入れる窓を必ずしも作らなくてよいことになっています。
2. 他にも、使いみちから見て 仕方がないと認められる居室
次に、「その他用途上やむを得ない居室」として、
大きく分けて2つのパターンで、具体的な居室の例が挙げられています。
2-1. 居室の使いみちから、窓がない方がよい居室
この中には、
- 音の問題
- 光を遮る必要性
- 衛生面
- あるいは診察や検査のしやすさ
から、窓がない方がよかったり、あってもごく小さくしたい居室が含まれます。
例えば、こんな居室です。
音の問題で、防音した方がいい居室
- お家で使う音楽の練習室やオーディオルームなど (ただし、しっかりした防音構造で、お家の広さや部屋数から見て、 おまけの居室だとわかる場合に限ります)。
- テレビ局やラジオ局の放送室 (スタジオや機械室、その手前の部屋などを含みます)。
- 耳の検査をする居室みたいに、 外の音や振動が邪魔になるようなところ。
光が入ると困る居室
- 写真の現像をする暗室や、星を見るプラネタリウムなど (小中学校の視聴覚教室は別です)。
危ないものを扱ったり、すごく清潔にしておきたいから、窓はなるべく小さくしたい居室
- 大学や病院の実験室、研究室、消毒をする部屋、クリーンルームなど。 放射性のものや危ない薬を扱う、遺伝子の研究をする、 病気の菌を扱う、ばい菌をなくす作業をする、 すごくきれいな環境で検査や治療をする、 といった理由で、細菌やホコリが入らないようにしたい場所です。
自然の光が診察や検査のじゃまになる居室
- 眼科の診察室や検査室で、 自然光があると困る機械を使うところ。
- 歯医者さんや耳鼻科の診察室、検査室で、 部屋の電気をつけて診察や検査をするところ。
2-2. 主に大人が使い、採光ルールがもともと厳しくない建物にある居室と似たような使いかたをする居室
こちらは、主に健康な大人の人が使う居室で、
その使い方が、もともと法律(法第28条第1項)の採光ルールが
あまり厳しくない種類の建物の中にある居室と似ている場合の話です。
具体的には、次のような居室があります。
会社や学校などで仕事をするような居室
- 事務室(OA機器がたくさんある居室も含む)、 会議室、お客さんを迎える応接室、 学校の職員室や校長室、 病院の院長室、ナースステーション(看護師さんの詰所)など。
料理をしたり、印刷したりといった作業をする居室
- レストランの厨房や、会社の印刷室など。 (ただし、家のキッチンで、ダイニングと一緒になっているような場合は違います。)
たくさんの人が集まる、劇場みたいな居室
- 舞台と固定された客席があって、いろんな人が使う講堂など (劇場、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の仲間です)。
建物を管理するための居室
- 管理事務室、守衛さんがいる居室、受付、 泊まりで仕事をする宿直室や当直室など。
お店の売り場
- 売店など、ものを売っているお店の売り場部分です。
まとめ
ここまで見てきたように、
特別な使いみちの居室には、
必ずしも光を取り入れる窓を設けなくてもよい、というルールがあるんですね。
これを知っておけば、
お客さんのいろんな希望に応えたり、
もっと建物が使いやすくなるような、
そんな設計の幅が広がるかもしれません。
ただ、法律やこういったおしらせは、変わることもあります。
だから、実際に設計するときは、
いつも新しい情報をチェックして、
もし「これ、どうなのかな?」と思うことがあったら、
役所や確認検査機関に聞いてみるのが安心ですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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