こんにちは。
私たち建築・不動産業界にとって、 見過ごせないニュースが発表されました。
老朽化が進む特別養護老人ホーム(特養)やリハビリテーションの施設を転換する。
高齢者向け小規模シェアハウス、国が全国展開へ 家賃安く過疎地でも – 日本経済新聞 https://t.co/zpxUrylsFw
— いしいさん【建築基準法コンサルタント】 (@ishiisans) June 3, 2025
2025年6月3日、政府が打ち出した 「高齢者向け小規模シェアハウス」の全国展開方針です。
これは、単なる福祉政策ではなく、 新たな事業機会のシグナルかもしれません。
この記事では、事業者として知っておきたい 事業の可能性や、法的な注意点などを分かりやすく解説していきます。
■ この政策、そもそもどんな話?
まず、この政策のポイントを押さえておきましょう。
一言でいえば、 「地方創生交付金を使って、古い特養などを高齢者向けシェアハウスにリフォームすることを国が後押ししますよ」 というものです。
これは、ただ建物を壊して新しく建てる「スクラップ&ビルド」ではなく、 今ある建物を活かして社会の課題を解決しようという 「ストック活用」の考え方がベースにあります。
人口が減っているエリアの遊休不動産を再生させつつ、 高齢者の住まいを確保する、一石二鳥を狙った戦略的な一手と言えます。
■ 事業者としてのビジネスチャンスはどこにある?
この政策は、私たちにとって 新しい「アセットタイプ」、つまり投資対象が生まれるチャンスと捉えられます。
● 新たな市場へのアプローチ これまでターゲットとしにくかった、 手頃な家賃を求める高齢者層という大きなマーケットにアプローチできる可能性が広がります。
● 遊休不動産のバリューアップ 塩漬けになっていた地方の旧公共施設などを、 安定したインカムゲインを生む収益物件へと再生させる道筋が見えてきます。
● 関連ビジネスへの展開 建物のコンバージョンだけでなく、 完成後の運営管理(プロパティマネジメント)やサブリース、 生活支援サービスの提供など、事業の裾野は広いと考えられます。
■ 事業化の前に。「用途変更」のチェックリスト
この事業を進める上で、 最も重要なキーワードが「用途変更」です。
特養などをシェアハウス(多くは「寄宿舎」扱い)に変えるには、 以下の点をしっかりチェックする必要があります。
● 確認申請は必要か? 特殊建築物への用途変更で床面積が200㎡を超えれば、 基本的に確認申請は必要です。 既存ストックの規模を考えれば、ほとんどのケースで対象になるでしょう。
● 既存不適格の壁をどう越えるか? 古い建物の場合、現行法に適合していない「既存不適格」であることが少なくありません。 用途変更を機に、耐震性や防火・避難規定などを現行法に合わせる必要が出てきます。 この改修コストが、事業計画の大きな変動要因になります。
● 消防協議は済ませたか? 用途が変われば、消防法上の扱いも変わります。 スプリンクラーなどの設置基準が厳しくなることも。 所轄消防との事前協議は欠かせません。
■ 事業性の評価とこれからの動き
事業性を評価する上で、チェックすべき数字は 「初期投資」「運営コスト」「想定収益」の3つです。
この事業の最大の魅力は、 地方創生交付金によって初期投資を大きく圧縮できる可能性がある点です。
補助金の詳細は今後の発表次第ですが、 これが事業のROI(投資収益率)を大きく左右する重要な要素になります。
また、先行するサ高住との違いをどう出すかもポイントです。
単なるハコモノではなく、 コミュニティ形成といったソフト面での付加価値が競争力を生み出すカギになります。
■ まとめ
この政策は、業界全体に 新しいビジネスの風を吹かせる可能性を秘めています。
ただし、事業を成功させるためには、 法規制への対応力、技術的な知見、 そして地域に合った事業モデルを組み立てる企画力といった、 総合的な力が問われることになります。
まずは情報収集のアンテナを高く張り、 来るべきチャンスに備えてみてはいかがでしょうか。