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【建築士法】設計・監理業務委託の「契約の流れ」を時系列で徹底整理!

設計事務所の日常業務、本当にお疲れ様です!図面と向き合う時間はもちろん、意外と神経を使うのが「契約」の仕事ですよね。

「条文って、どうしてあんなに読みにくいんだろう…」 「この手続き、本当にこれで合ってる?」

そんな不安を感じたことはありませんか?

大丈夫です。契約のルールは、一度流れで覚えてしまえば、決して怖いものではありません。

むしろ、建築主との信頼関係をがっちり固め、万が一のトラブルから私たち自身を守ってくれる最強の味方になります。

今回は、建築士法が定める契約の心臓部、「契約前」「契約時」「契約後」の3ステップを、まるで先輩が後輩に教えるような、超わかりやすいストーリー仕立てで解説します!

  • 契約する前: ワクワクを共有する「作戦会議」(重要事項の説明 / 法第24条の7)
  • 契約する時: サイズで変わる「公式ルール」(300㎡超の契約書 / 法第22条の3の3)
  • 契約した後: 「約束の証」を渡す(契約書面の交付 / 法第24条の8)

さあ、一緒に契約マスターへの道を歩み始めましょう!


STEP1:契約する前 ― ワクワクを共有する「作戦会議」(法第24条の7)

家づくりや建築プロジェクトは、建築主にとって一大イベント。期待と同じくらい、不安も抱えているものです。

そこで、契約を結ぶ前に「私たちは、こんな設計思想で、こんな風に仕事を進めますよ!」という想いを共有する作戦会議を開きましょう。

それが、法律でいう「重要事項の説明」です。

一言でいうと?

→ 契約前の「はじめまして、私たちはこういうチームです」という自己紹介と、プロジェクトの進め方を丁寧に説明する時間。

(建築士法第24条の7)

建築士事務所の開設者は、…契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、…管理建築士等をして、...書面を交付して説明をさせなければならない。

  1. どんな図面を作るか
  2. 工事が図面通りか、どうチェックして、どう報告するか
  3. 担当建築士は誰か(資格もちゃんと見せます)
  4. 報酬はいくらで、いつ支払ってもらうか
  5. もし契約をやめる場合はどうするか …など 2 …説明をするときは、…建築士免許証…を提示しなければならない。

 

現場でのリアルな動き

この作戦会議のリーダーは、管理建築士さんです。

契約書にハンコを押す、その前に。まず、これから始まるプロジェクトの全体像が書かれた「重要事項説明書」という書面を建築主にお渡しします。

そして、その書面を見ながら、 「設計図は、意匠図、構造図、設備図のここまでを作成します」 「工事が始まったら、週に1回現場に伺って、図面通りできているかチェックしますね。
進み具合は月1でレポートします!」 というように、一つひとつ丁寧に説明していきます。

この時、めちゃくちゃ大事なのが、自分の建築士免許証をパッと提示すること
「私は、国に認められたプロの建築士です。ご安心ください」という、信頼の証です。これを忘れると、せっかくの説明も締まりません。

この一手間が、後の「こんなはずじゃなかった…」を防ぐ最高の予防線になるんです。


STEP2:契約する時 ―【300㎡超の新築】で発動する特別ルール(法第22条の3の3)

さあ、いよいよ契約締結です。ここで、法律は一つの大きな分かれ道を設けています。それは「延べ面積300㎡を超える『新築』のプロジェクトか、どうか」です。

規模が大きいだけでなく「新築」であることがポイントです。社会的な影響も大きい大規模な新築工事では、より厳格な約束の交わし方が求められる、というわけです。

一言でいうと?

300㎡を超える「新築」の建物は、お互いにハンコを押した契約書を「せーの」で交換する、という特別なルールが適用される。

(建築士法第22条の3の3)

延べ面積が三百平方メートルを超える建築物の新築に係る設計受託契約又は工事監理受託契約の当事者は、…契約の締結に際して…書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
(中略)
3 建築物を増築し、改築し…場合においては、当該増築、改築…に係る部分の新築とみなして…適用する。
5 …書面を相互に交付した場合…には、第二十四条の八第一項の規定は、適用しない

 

現場でのリアルな動き

延べ面積300㎡超そして新築」。この2つの条件が揃ったとき、特別な契約ルールが発動します。

契約書に、事務所側と建築主側、双方が署名(または記名押印)します。そして、その契約書を「はい、どうぞ」「どうも」とお互いに交換(相互交付)する。

ここまでがワンセットです。ガッチリと約束を固めるイメージですね。

ここで、「じゃあ、大規模なリフォームや増築はどうなるの?」という疑問が湧きますよね。ご安心ください。法律はそこも見越しています。

増築や改築、大規模修繕などの場合、その「工事を行う部分」を新築とみなし、その面積が300㎡を超えれば、この特別ルールが適用されます。

そして超重要ポイント! この「相互交付」をやった場合、次に出てくるSTEP3の手続きは、もう必要ありません(適用除外)。

【300㎡超の新築(またはそれに準じる増改築)】は、このSTEP2で契約手続きがフィニッシュ!と覚えておきましょう。


STEP3:契約した後 ― 「約束の証」を渡す(法第24条の8)

では、STEP2の特別ルールに当てはまらなかったプロジェクト、つまり「300㎡以下の建物」や「300㎡超でも新築や大規模増改築ではない修繕など」の場合はどうなるのでしょうか。

その場合は、契約を結んだに、「たしかに、この内容で契約しましたよ」という約束の証を、私たち事務所から建築主へお渡しする、というシンプルなルールになります。

一言でいうと?

→ STEP2の特別ルールに当てはまらない全ての契約は、契約後、すみやかに「契約内容はこれです」という書面を建築主にお渡しする。

(法律の条文:建築士法第24条の8)

建築士事務所の開設者は、…契約を締結したときは、遅滞なく、…事項を記載した書面を当該委託者に交付しなければならない。

 

現場でのリアルな動き

STEP2との違いは、「相互に」ではないという点です。 事務所から建築主へ、一方的に交付すればOK。

と言っても、実務では難しく考える必要はありません。

通常、契約時に作成する「設計・工事監理業務委託契約書」。

これに法律で定められた項目がすべて書かれていれば、その契約書の控えを建築主にお渡しするだけで、このSTEP3の義務を果たしたことになります。

契約が終わったら、なるべく早く(法律用語でいう「遅滞なく」)お渡しするのがスマートです。


最終チェック!3つの流れをおさらい

さあ、これで契約の一連の流れが完璧に見えてきましたね!最後に、頭の中をスッキリ整理しましょう。

  1. 【契約前】作戦会議(重説)

    • 規模や用途に関わらず、すべての契約で必須!
    • 「これから、こう進めますね」という丁寧な説明会。免許証の提示を忘れずに。
  2. 【契約時】契約書の取り交わし方

    • もし【300㎡超の新築】(または準じる増改築)なら…
      • 特別な「相互交付」ルールが発動。お互いに記名押印して契約書を交換!(ここでゴール)
    • もし上記に当てはまらないなら…
      • 通常の契約。そしてSTEP3へ進む。
  3. 【契約後】約束の証を渡す

    • STEP2に当てはまらなかった全ての契約で必要!
    • 契約が終わったら、控えとしての契約書を「はい、どうぞ」と渡す。

 

いかがでしたか? 法律の条文は、私たちの仕事の「公式マニュアル」です。

この基本さえマスターすれば、もう契約業務で迷うことはありません。

自信のある態度は、建築主からの信頼にも繋がります。

さあ、明日からの実務に、ぜひこの知識を活かしてください!

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