Architecture / Exam Glossary
採光計算って何?住宅の居室に
なぜ窓の大きさの基準があるのか
二級建築士製図試験を受ける人へ
設計製図の試験で、平面図を描いているとき「この部屋、窓が小さすぎないか?」と不安になったことはないだろうか。この不安は正しい感覚で、住宅の居室には法律で窓の大きさの最低基準が決まっている。今回はこの「採光」のルールを整理していきたい。
今年の課題「商店街に建つ併用住宅」では、商店街特有の立地条件(隣の建物が近い)が採光計算に影響を与えやすい。設計の早い段階で採光が成立するかどうかを確認しておくことが重要だ。
そもそも採光ってなぜ必要なのか
採光とは、自然の光を室内に取り込むことだ。窓が極端に小さい部屋や、窓がまったくない部屋では、日中でも真っ暗になってしまう。そういう環境で長時間生活することは健康に悪影響をもたらすため、建築基準法では住宅の居室に必要最低限の窓の大きさを義務づけている。
根拠条文は建築基準法第28条第1項で、「住宅の居室には、採光のための窓を設けなければならない」という内容が書かれている。具体的な計算方法は建築基準法施行令第19条・第20条に定められている。
なお、この規定が対象にしているのは「住宅の居室」だ。今年の課題は住宅と店舗の併用住宅だが、1階の店舗部分には採光規定は適用されない。採光計算が必要なのは、住宅部分の居室(寝室・居間・子ども部屋など)だけだと意識しておくとよい。
住宅の居室に必要な窓の大きさ
住宅の居室(寝室・居間・子ども部屋など)には、床面積の1/7以上の「有効採光面積」が必要だ(令19条)。
ここで注意したいのは「有効採光面積」という言葉だ。これは窓の実際の面積そのものではなく、窓の面積に「採光補正係数」という数値をかけて求めた面積のことだ。なぜ補正が必要かというと、同じ大きさの窓でも、隣の建物が遠くにあれば光がたくさん入るし、すぐ隣にあれば光がさえぎられて少ししか入らないからだ。この条件の違いを数値で表したのが採光補正係数だ。
有効採光面積 = 窓の面積 × 採光補正係数
有効採光面積 ≧ 居室の床面積 × 1/7
たとえば6帖(約10㎡)の寝室なら、必要な有効採光面積は10÷7≒1.43㎡以上ということになる。この数値を上回るように、窓の大きさと位置を計画する必要がある。
ここで重要なのは、採光が成立しない部屋は「居室」として扱えないという点だ。採光規定を満たせない部屋は「納戸」や「S(サービスルーム)」として図面に表記しなければならず、寝室や居間として使うことはできない。試験の平面図でも、採光が取れない部屋に「洋室」と書いてしまうと減点対象になるため、計画の早い段階で採光が成立するかどうかを確認しておくことが大切だ。
「採光補正係数」って何?
採光補正係数は、D(水平距離)とH(垂直距離)の比率と、用途地域ごとの計算式から求める。

- D:窓が面している隣地境界線(または道路の反対側の境界線)から、窓のある建物の外壁までの水平距離
- H:建物の直上の軒先(採光をさえぎる一番上の部分)から、窓の中心までの垂直距離
D÷Hで「採光関係比率」を求め、用途地域ごとの計算式に当てはめて補正係数を算出する。たとえば商業系地域で、D=2m・H=4mの場合は次のようになる。
| 用途地域 | 採光補正係数の計算式 |
|---|---|
| 住居系の地域 | (D ÷ H) × 6 − 1.4 |
| 工業系の地域 | (D ÷ H) × 8 − 1 |
| 商業系の地域(今年の課題) | (D ÷ H) × 10 − 1 |
計算例(商業系地域・D=2m・H=4mの場合)
採光関係比率 = 2 ÷ 4 = 0.5
採光補正係数 = 0.5 × 10 − 1 = 4.0 → 上限の3.0
10㎡の居室に0.5㎡の窓があれば、有効採光面積 = 0.5 × 3.0 = 1.5㎡ ≧ 10÷7≒1.43㎡ → 採光OK
計算した補正係数には、いくつかのルールがある。
- 補正係数が3.0を超える場合は3.0が上限
- 窓が道路に面している場合、計算値が1未満でも1として扱える
- 道路に面していない場合で計算値がマイナスになる場合は0(採光なし)として扱う
採光計算について、より詳しい計算例や図解についてはこちらの記事も参考にしてほしい。
今年の課題(商店街)での注意点
今年の課題が商業系の用途地域に建つ可能性が高いことは、採光にとって有利な条件だ。なぜなら、商業系地域の計算式(×10−1)は住居系地域(×6−1.4)より大きな係数が出やすく、同じ窓の大きさでも有効採光面積が大きく算定されるからだ。
ただし、商店街特有の問題がある。商店街の敷地は隣の建物と近接しやすいという点だ。D(隣地境界線までの水平距離)が小さくなると採光関係比率が下がり、補正係数が小さくなる。最悪の場合、補正係数がマイナスになると、その窓は採光に使えないことになってしまう。
試験対策として押さえておきたい判断の流れはこうだ。
- 住宅部分の居室(特に2F・3Fの寝室・居間)の窓がどの方向に面しているかを早めに確認する
- 隣地境界線に近い側の窓はDが小さくなりやすいため、採光が成立しにくいと意識して計画する
- 道路に面した側の窓は計算値が1未満でも1として扱えるため有利。前面道路(商店街側)に居室の窓を向けると採光が成立しやすい
「計画の要点等」での記述としては、「住宅部分の各居室は、採光補正係数を計算の上、有効採光面積が床面積の1/7以上となるよう窓の大きさと位置を計画した」という一文が基本だ。さらに「商業系地域の補正係数(D/H×10−1)を適用し、前面道路に面した窓を優先的に計画することで採光を確保した」と付け加えると、法規の根拠を踏まえた記述になる。
まとめ
住宅の居室には床面積の1/7以上の有効採光面積が必要。根拠は法28条・令19条。
有効採光面積は「窓の面積×採光補正係数」で求める。補正係数はDとHの比率と用途地域の計算式から算出する(令20条)。
商業系地域の補正係数(D/H×10−1)は住居系(×6−1.4)より緩やかで採光が成立しやすい。ただし商店街の敷地は隣地に近接しやすくDが小さくなる点に注意。
前面道路(商店街側)に面した窓は計算値が1未満でも1として扱えるため有利。居室の窓を道路側に優先的に計画することで採光を確保しやすくなる。
References
- e-Gov法令検索「建築基準法 第28条(居室の採光及び換気)」 elaws.e-gov.go.jp
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第19条・第20条(採光)」 elaws.e-gov.go.jp
- ishiisan.com「採光計算の解説記事(初心者向け)」 ishiisan.com
※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。実際の出題内容・設計条件は、必ず試験当日の問題文と公益財団法人建築技術教育普及センターの公式発表をご確認ください。