見積書が「時価」? 寿司屋化する建築現場のリアル
いま、建築業界の見積書が、銀座の回らない寿司屋のメニューみたいになっているのをご存知でしょうか。
価格のところに「時価」って書いてある、あの恐怖のシステムです。
見積書の有効期限は、ここ数年で信じられないスピードで短縮されています。
最近では「本日中(午後5時まで)」なんていう注記がマジメに書かれている現場もあるほどです。
打ち合わせは、もはや豊洲市場の競り
こうなると、施主さんとの設計打ち合わせも、だんだん市場の競り(せり)みたいになってきます。
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見積書の注意書きがもはや脅迫 「※本見積もりは〇月〇日10時時点の相場です。
発注時の為替次第でガッツリ変動します」という一文が標準装備に。これ、もはや見積書じゃなくて「建築士の願望」ですよね。 -
タイムセールばりのクロージング 打ち合わせ中のリアルな攻防がこちら。
「奥様、この海外製食洗機、今朝の円安のせいで明日には5万円上がっちゃいます! ハンコ押すなら今! はい右手にペン持って!」
実演販売員ばりに決断を迫る建築士の姿がそこにあります。
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「大将おまかせ」で予算が溶ける 「予算内でよろしく!」と言われて必死に図面を引いたのに、
いざ見積もりを取ったら、数ヶ月前と同じ仕様なのに数百万円も跳ね上がって戻ってくる怪奇現象。
こだわりが、相場の波にあっけなく流されていきます。
建築士、もはやディーラー説
昔は「空間の魔術師」なんて呼ばれた建築士ですが、最近は「建材のトレーダー」に近い気がします。
毎朝デスクに座って最初に見るのは、ピンタレストのおしゃれな画像ではありません。
為替チャートと、ロンドン金属取引所のアルミ相場、それからコンテナ船がどこの港で足止めを食らっているかです。
「この屋根、いま発注するとラグジュアリーすぎて震えるな。ガルバリウムにしよう……って、ガルバも値上がりしてるじゃん!」
予算と相場のパズルを解くだけで1日が終わり、頭から煙が出そうになります。
「普遍的な建築」の前に、明日の鉄骨
デザイン重視の建築士が「時代を超える普遍的な建築を……」と遠い目で熱く語っている横で、現実は非情に語りかけてきます。
(その普遍的な建築、来月には坪単価がまた上がりますよ)
建築費が「時価」になったいま、建築士がデザインしているのは空間というよりも、激しく動く「日本経済そのもの」なのかもしれません。
「明日は鉄骨の相場が下がりますように……」と七夕ばりの祈りを捧げながら、今日も有効期限「当日限り」の見積書が作られています。
現場からは以上です。