お勤めご苦労さまです。いしいさん(@ishiisans)です。
いつもこのブログを読んでいただきありがとうございます。
2018年から2019年にかけて、建築・不動産業界では大きな問題が明るみになりましたね。
例えば、
・TATERUの融資偽装
・かぼちゃの馬車を運営していた会社の民事再生法
・サブリース問題
・レオ○○○の界壁の施工不備
などなど。毎日のようにニュースで報道されていました。
今回は、この「界壁」(読み方は、かいへき)について解説していきます!
結論としては、
・遮音性能が必要。
・耐火性能が必要。
では、説明していきます!
(※わかりやすくするため、強化天井などの内容は省略しています。)
界壁とは?
長屋と共同住宅の住戸間の壁のことです。
図で表すとこんな感じ↓
青い壁が界壁です。
ここで注意!
もう一度図を見て下さい。
青い壁が天井まででなく、一番上まで伸びていますよね?
そうなんです!原則、天井で止めてはいけません!
(※わかりやすくするため、強化天井などの規定は省略しています。)
この一番上まで伸ばすことを条文では、
「小屋裏又は天井裏まで達せしめること」と書かれています。
・小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
界壁の性能基準
性能基準は、2つです。
②耐火性能(令第114条第1項)
では、それぞれ見ていきます。
①遮音性能(法第30条第1項及び令第22条の3)
法第30条第1項(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)
長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一 その構造、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
〇令22条の3第1項(技術的基準)
〇昭45建告1827(界壁の構造方法)二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。
解説
大事なところにマーカーをしてみました。
まず、出だしを見てください。一部抜粋するとこのように↓書いてあります。
次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
次に掲げる基準とは、一号と二号の両方を指しています。
つまり、長屋と共同住宅の界壁は、一号と二号の両方を守らなければならないのです。
では、一号と二号をそれぞれ見ていきます。
● 一号
ここには、音のこと、つまり、遮音性のことが書いてあります。
この一号をざっくりまとめると、
遮音性のために界壁は、政令で定める技術的基準と国土交通大臣が定めた構造方法を満たすようにしてね!ってことです。
もっと簡単にいうと、
黄色(令22条の3第1項)と緑(告示1827号)の両方を満たしてね!ってことです。
ちなみに
令22条の3第1項は、
法第30条第1項第一号(法第87条第3項において重要する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、
次の表の左欄に掲げる振動数の音に対する透過損失がそれぞれ同表の右欄に掲げる数値以上であることとする。
振動数(単位 Hz) | 透過損失(単位 ㏈) |
125 | 25 |
500 | 40 |
2000 | 50 |
つまり、振動数と透過損失の関係が書いてあります。
そして告示1827号には、遮音性能を満たす界壁の具体的な仕様(例えば、界壁の厚みや使用する材料等について)の規定が書かれています。
● 第二号
「小屋裏又は天井裏に達するものであること。」と書いてあります。
つまり、上の図でも解説した通り、
界壁を一番上まで伸ばせばよいのです。
・界壁は、小屋裏又は天井裏に達せしめること。
②耐火性能(令第114条第1項)
令第114条(建築物の界壁、間仕切り壁及び隔壁)第1項
長屋又は共同住宅の各戸の界壁は(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、令112条第3項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
解説
赤でマーカーを引いたところが大事です。
つまり
長屋又は共同住宅の界壁は、
・準耐火構造にしてね
・小屋裏又は天井裏まで達せしめてね
っていうことです。
・界壁は、小屋裏又は天井裏に達せしめること。
まとめると
①遮音性能を満たすには、
・黄色(令22条の3第1項)と緑(告示1827号)の両方を満たすこと。
・小屋裏又は天井裏に達せしめること。
②耐火性能を満たすには、
・準耐火構造にする。
・小屋裏又は天井裏に達せしめること。
別の言い方をすると、
①遮音性には、2つの条件。
②耐火性能にも、2つの条件。
があるのです。
つまり、界壁は、細かく分けると、「計4つ」の条件を満たせばOKなのです。
(※厳密に言えば、両方ともに小屋裏又は天井裏に達せしめることが共通で入っているので、満たさなければならない条件は実質3つになります。)
つまり、細かく分けると「計4つ」の基準を満たせばOK!
【詳細図】木造の長屋や共同住宅でよくやる仕様
ヘタクソな図でスイマセン(苦笑)
「遮音性能の条件2つ」及び「耐火性能の条件2つ」。
つまり、計4つの基準を満たすにはこのような↑仕様にすることが多いです。
ちなみに、確認申請において、界壁の詳細図が求められます。
なので、上記のような図を書いておけばOKです。
・内部に厚さが2.5cm以上のグラスウール(かさ比重0.02以上のもの)又はロックウール(かさ比重が0.04以上のもの)
・界壁の両面の仕上げ材料は、厚さ1.2cm以上のせっこうボードを2枚貼する。
レオ○○○の界壁はどうなっていたか?
(出典:国土交通省のHPより)
私の書いたヘタクソな図(苦笑)と比べてみて下さい。
明らかに違いますよね?
グラスウールやロックウールはどこに行ってしまったんでしょうか。
代わりに「発砲ウレタン」を使うなんて・・・。ひどすぎる。
意図的なんでしょうか?それとも単に無知だったんでしょうか?
また、図面には、界壁は小屋裏又は天井裏に達せしめる。と書いてあったそうですが、
実際には、小屋裏又は天井裏に達せめられていなかったようです。
ヒドイ。ヒドスギル。ヤバスギル。
こんなこと許せますか?あなたはどう思いますか?
さいごに
以上、【図解・詳細図あり】界壁とは?【一級建築士がわかりやすく解説!】についてでした。
結論は、
・遮音性能が必要。
・耐火性能が必要。
そして、
①遮音性能を満たすためには、
・黄色(令22条の3第1項)と緑(告示1827号)の両方を満たすこと。
・小屋裏又は天井裏に達せしめること。
②耐火性能を満たすためには、
・準耐火構造にする。
・小屋裏又は天井裏に達せしめること。
です。
もう二度とこういう事件が起きないように、この結論は必ず押さえておきましょう!
なお、界壁は2019年に法改正があり、小屋裏又は天井裏に達せしめなくていい方法が追加させました。簡単にいうと、強化天井を使う方法です。
そのことは、また別の記事にまとめますのでお待ちくださいね。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。
他の記事も読んでみたくださいね!
【追記】 界壁を小屋裏・天井裏まで達せしめなくていい方法はこちら↓をご覧ください。
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【追記】界壁を天井裏まで達せしめなかったので、免許取り消し
令和3年4月6日 国土交通省から一級建築士の「免許取消」が発表されました。
18物件の共同住宅等で、断面図に各戸の界壁が小屋裏ないし天井裏に達する設計がされているにも関わらず、きちんと工事監理をしなかった結果、界壁が小屋裏や天井裏に達せしめられてなかったそうです。
つまり、工事監理を十分に行わなかったため、法30条と令114条の規定に違反する工事が行われる事態を生じさせてしまいました。
このことにより、一級建築士の免許取消されたそうです。
界壁をきちんと施工しなかったことにより、免許取消されることがあります。
このブログを読んでくださっているあなたは、くれぐれもこういうことが無いようにしましょうね!