こんにちは。 ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、建築基準法の高さ制限の中でも特に混同しやすい、
「道路斜線」と「北側斜線・隣地斜線」
における高低差緩和の違いについて解説します。
早速ですが、結論からお伝えします。
敷地と前面道路(または隣地)との高低差を とした場合の緩和の計算式は、それぞれ以下のようになります。
道路斜線
北側斜線・隣地斜線
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?
法令の条文を確認しながら、詳しく見ていきましょう。
(時間がない方は、この結論の式だけでも覚えておくと、とても役立ちます!)
道路斜線の高低差緩和
まずは、道路斜線の高低差緩和に関する条文です。
建築基準法施行令 第135条の2 第1項 建築物の敷地の地盤面が前面道路より1m以上高い場合においては、その前面道路は、敷地の地盤面と前面道路との高低差から1mを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなす。
▼ 解説
この条文を読むと、 単純に「 を足せば良い」ように見えますが、
実はそれが落とし穴です。
その理由を理解するために、 まず道路斜線の高さが「どこから」測るものだったか、思い出してみましょう。
根拠となる条文は、こちらです。
建築基準法施行令 第2条第1項第六号イ (法第56条第1項第一号の規定…による高さの算定については)前面道路の路面の中心からの高さによる。
そう、道路斜線は「前面道路の中心の高さ」を基準にします。
つまり、 敷地が前面道路より メートル高い場合、
建物の高さ計算のスタートラインは、 まず メートル低い位置から考え始める必要があるのです。(-H
の補正)
この「高さの基準は前面道路」という点を念頭に置いて、 もう一度、高低差緩和の条文(令135条の2)を読んでみましょう。
条文の主語に注目してください。
「その前面道路は」
とありますね。
これは、 まず道路の高さを基準にするため(-H
)、
その基準となる「前面道路」自体の位置が 「 (H-1)/2
だけ高い位置にある」とみなす、という意味になります。
したがって、最終的な高さの補正は、
- 基準を合わせるための「 」
- 緩和規定による「 」
この2つを合わせたものになるわけです。
💡 ポイント
道路斜線は、あくまで「前面道路」が基準です。 そのため、敷地の高さとの差をまず考慮(
-H
)する必要がある、と覚えましょう。
北側斜線・隣地斜線の高低差緩和
次に、北側斜線と隣地斜線です。 この二つの高低差緩和は同じ考え方なので、ここでは北側斜線の条文を見てみましょう。
建築基準法施行令 第135条の4 第1項第二号 建築物の敷地の地盤面が北側の隣地の地盤面…より1m以上低い場合においては、その建築物の敷地の地盤面は、当該高低差から1mを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなす。
▼ 解説
こちらの条文では、 主語が「その建築物の敷地の地盤面は」となっている点に注目してください。
これは、建物を建てる「敷地の地盤面」そのものを、
計算上「 (H-1)/2
だけ高い位置にある」とみなす、という意味です。
道路斜線のように基準点をずらす考え方ではないため、 こちらは単純に数値をプラスするだけで補正が完了します。
道路斜線と比べて、非常にシンプルですね。
まとめ
今回は、「道路斜線」と「北側斜線・隣地斜線」の高低差緩和の違いについて解説しました。
道路斜線
▶︎基準が「前面道路」だから、まず-H
の補正が必要。北側斜線・隣地斜線 ▶︎基準が「敷地の地盤面」だから、単純にプラスするだけ。
この高低差緩和は、 設計実務はもちろん、建築士の試験でも頻出する重要な知識です。
まずはこの結論の式と、 「なぜそうなるのか(=高さの基準点がどこか)」をセットでしっかり覚えておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。