皆さん、お仕事お疲れさまです!
今回は、建物を建てる際のルールで、少し複雑だけれど非常に重要な二つの言葉、
「告示(こくじ)」と「国土交通大臣の認定」
について、その決定的な違いを徹底的に解説します。
建物が安全であることは、そこで暮らす人たちの命と財産を守る上で最も大切なことです。
そのため、「建築基準法」という法律で、建物の最低限の基準が定められています。
しかし、法律の条文だけでは、すべての細かい技術的な内容や、新しい素材・工法に対応しきれません。
そこで、その隙間を埋めるために、「告示」や「国土交通大臣の認定」といった仕組みが活用されているんです。
告示(こくじ):全国共通の「これでやってねリスト」
まず「告示」は、
特に、建物の技術的な詳細を決める際によく用いられます。
告示ってどんなもの?
- 役割: 法律で定められた基準を、より具体的に「では、どうすればその基準を満たせるのか?」という形で示します。
- 例えば、どのような材料が「燃えにくい材料(不燃材料)」として使えるか。
- あるいは、火事を防ぐドア(防火戸)をどんな風に作ればいいか、といった詳細が記されています。
- 対象: 特定の個人や企業だけではなく、日本中の全ての建物や、建物を建てる際に行われる作業に共通して適用される、基本的な取り決めです。
- 法的拘束力: 法律と同等の強い拘束力を持ちます。告示に定められたルールを守らなければ、「建築基準法違反」となってしまいます。
- 具体的な例:
- 「不燃材料」として認められる材料とその基準を定めたリスト(例:平成12年建設省告示第1400号)
- これは、「コンクリート、鉄鋼、厚さ12mm以上の石膏ボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る)などは、火事の際に燃え広がりにくい材料として認められますよ」というように、『燃えにくい材料(不燃材料)』に関する基本的なお墨付きリストと言えます。
- 火災時の延焼を防ぐ窓やドア(防火設備)の基本的な構造に関する決まり(例:平成12年建設省告示第1360号)
- 「防火戸は、このくらいの頑丈な枠と、このくらいの厚さのガラスを使って作ってくださいね」といった、防火設備を製造する上での基本的な構造ルールが細かく規定されています。
- 「不燃材料」として認められる材料とその基準を定めたリスト(例:平成12年建設省告示第1400号)
告示は、例えるなら
「建物を安全に建てるための、国が作った『基本的な手順書』や『材料リスト』」
のようなものです。これがあるおかげで、日本中どこでも同じレベルの安全性が確保された建物が建てられるのです。
国土交通大臣の認定:特別な「これはOKだよ!の太鼓判」
次に「国土交通大臣の認定」は、
認定ってどんなもの?
- 役割: 告示で定められた「共通ルール」ではカバーしきれない、新しく開発された材料や、特別な工法に対して、「これは使っても大丈夫ですよ」という証明を出します。
- 例えば、告示にはない、非常に革新的な防火設備などが登場した際に活用されます。
- 対象: 主に、最先端の技術や、従来のルールでは判断が難しい特別な材料、あるいは特殊な工法が対象となります。
- 力: 認定をもらったものは、「国が特別に認めたので、法律の基準を満たしているとみなします」という効力があります。この認定がなければ、たとえ性能が高くても使用できない材料や設備も少なくありません。
- 取得方法: その材料を製造したメーカーや、新しい工法を考案した設計者などが、その安全性を示すデータなどを国に提出し、厳正な審査を経て初めて取得できます。このプロセスには、時間と費用がかかる場合があります。
- 具体的な例:
- 特定の会社が作った、燃えにくい特別な壁材に対する「不燃材料認定」
- 例として、NM-〇〇〇〇 のような「認定番号」が与えられます。(※NMは不燃材料、FMは準不燃材料など、略号と数字の組み合わせが一般的です。)この番号を見れば、「あ、この壁材は、国が特別に『燃えにくい材料』として認めたんだな」ってわかります。
- これは、告示に載っていない新しい材料を開発したときなんかに必要になります。
- 特定の会社が作った、複層ガラス入りで見た目もおしゃれ、しかも火事もちゃんと防げる特別な引違い窓に対する「防火設備認定」
- 例として、EB-〇〇〇〇 のような「認定番号」が与えられます。(※EBは防火設備、EAは特定防火設備など、略号と数字の組み合わせが一般的です。)この認定があれば、「この防火窓は、見た目も優れているだけでなく、国の厳しい基準をクリアした信頼性の高い防火設備だ」と証明されます。
- 基本的な防火設備のルール(告示)を守りつつ、さらに進化させた製品を世に出すときに、この認定を取るわけです。
- 特定の会社が作った、燃えにくい特別な壁材に対する「不燃材料認定」
認定は、例えるなら
「国が『これはすごい!特別にOKだよ!』って太鼓判を押してくれる」
ようなものです。これがあるおかげで、新しい技術が積極的に建築分野で活用され、建物の可能性が大きく広がっていくのです。
「告示」と「大臣認定」、一番の違いは何?
ここまでで、両者の違いがなんとなく見えてきたでしょうか? 最後に、その決定的な違いを、一目でわかるようにまとめてみましょう。
まとめ
「告示」は、建物を建てる上での基本的な「土台となる共通ルール」です。 これにより、日本中の建物の安全性と品質が確保されています。
一方、「国土交通大臣の認定」は、その土台の上で、新しい技術や特別なものに対応するための「柔軟な仕組み」と言えるでしょう。
建物の設計、材料の選定、工事の実施、そして完成後の検査など、建築実務のあらゆる場面で、この「告示」と「大臣認定」の違いと意味合いを正確に理解していることが、
安全で質の高い建物を生み出す上で非常に重要ですし、業務の効率化にも繋がります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました! この情報が、皆さんの日々の業務の一助となれば幸いです。