Architecture / Exam Glossary
「異種用途区画」って何?住宅と店舗の
間に防火区画は必要なのか
二級建築士製図試験を受ける人へ
このシリーズの竪穴区画の記事で、「住宅部分と店舗部分の間を防火区画すること」という話が出てきた。あの記事では竪穴区画の免除条件として触れたが、実はもうひとつ、別の防火区画の論点がある。それが「異種用途区画」だ。
ここで大事な整理をしておきたい。竪穴区画の免除条件として求められる「防火区画」と、今回の「異種用途区画」は別物だ。竪穴区画の免除条件では準耐火構造の床・壁と防火設備(遮煙性能付き)が求められるが、異種用途区画では1時間準耐火構造の床・壁と特定防火設備(遮煙性能付き)が必要で、より高い性能が求められる。混同しないようにしておきたい。
結論から言うと、今年の課題規模では異種用途区画が不要になるケースが多い。ただし、なぜ不要なのかを条文の根拠で説明できるかどうかが、「計画の要点等」での差になる。
「異種用途区画」って何?
異種用途区画とは、ひとつの建物の中に、火災リスクの異なる複数の用途が混在する場合に、それぞれの用途の間を防火上有効に区切るルールのことだ。建築基準法施行令第112条18項に定められている。
「異種用途区画」という言葉は通称で、建築基準法の条文本文には出てこない。防火区画には全部で4種類あり(①面積区画、②高層区画、③竪穴区画、④異種用途区画)、その中のひとつが今回の異種用途区画だ。
なぜこのような区画が必要かというと、同じ建物の中でも用途によって火事の起きやすさや危険性がまったく異なるからだ。たとえば住宅と飲食店では、火気を使う頻度もそこにいる人の種類も違う。火事が起きたとき、区画がなければ危険度の高い用途の火が住宅部分に一気に広がってしまう。これを防ぐためのルールだ。
どんな場合に必要になるのか
異種用途区画が必要になるのは、建物の一部が建築基準法第27条第1項〜3項に該当する用途・規模の場合だ。この条件を満たす「特殊建築物の部分」と「その他の用途の部分(住宅など)」の間に区画が求められる。

今年の課題で想定される店舗の用途に絞って、具体的な基準を見てみよう。この数値は法27条第1項と法別表第一の組み合わせで定められている(詳細は法令集の別表第一を確認してほしい)。
| 想定される店舗の用途 | 法27条該当の条件(法別表第一による) | 該当すると… |
|---|---|---|
| 飲食店 | 2階以上の部分の床面積合計が200㎡以上 | 異種用途区画が必要 |
| 物品販売業を営む店舗 | 2階以上の部分の床面積合計が500㎡以上 | 異種用途区画が必要 |
| 事務所 | 特殊建築物に該当しないため規定なし | 規模にかかわらず不要 |
なお、事務所は特殊建築物ではないため、どんなに規模が大きくなっても法27条の対象にならず、異種用途区画は不要だ。今年の店舗用途が事務所系であれば、この点からも区画が不要と判断できる。
ここで重要なのは「2階以上の部分」という条件だ。今年の課題では店舗は1階に計画するのが基本なので、多くの場合「2階以上の部分に店舗の床面積がない」という状態になる。この場合、法27条の条件そのものを満たさないため、異種用途区画は不要になる。
区画が必要な場合、何をすればいいのか
万が一、法27条の条件に該当して異種用途区画が必要になった場合、区画の方法は次のようになる。
- 壁・床:1時間準耐火基準に適合する準耐火構造
住宅部分と店舗部分を仕切る壁・床を、1時間以上火に耐えられる準耐火構造にする。竪穴区画の記事で出てきた「準耐火構造の床・壁」と同じ考え方だ。 - 開口部:特定防火設備(遮煙性能付き)
区画を貫く出入口には、遮煙性能のある特定防火設備(防火戸)を設ける必要がある。
異種用途区画には、他の防火区画と異なるユニークな点がある。スパンドレル(防火区画に接する外壁部分)が不要という点だ。面積区画・高層区画・竪穴区画にはスパンドレルの設置が求められるが、異種用途区画だけは例外的に不要とされている。
また、令和2年(2020年)の改正で、飲食店・物品販売業を営む店舗・ホテルなど特定の用途では、自動火災報知設備を設けることで区画を免除できるようになった(令112条18項ただし書き・令和2年国土交通省告示第250号)。
今年の試験で、どう判断するか
今年の課題「商店街に建つ併用住宅(木造3階建て)」では、店舗の用途が問題文で初めて明らかになる。ただし、どんな用途が出題されるとしても、判断の手順は同じだ。
エスキス時の判断手順
① 店舗の用途を確認する(飲食店・物販・事務所など)
② その用途が法27条の対象かどうかを確認する
③ 2階以上に店舗部分があるかどうか、規模が基準を超えるかどうかを確認する
④ 該当すれば異種用途区画を設ける。該当しなければ不要。
店舗が1階のみで、かつ規模が法27条の基準を超えなければ、異種用途区画は不要になる。今年の課題規模(全体で200〜300㎡程度と想定)では、このケースに当てはまる可能性が高い。
「計画の要点等」では、次のような記述が考えられる。
記述例①:区画が不要な場合
「1階の店舗部分は2階以上に床面積を有しないため、法27条の規定に該当せず、住宅部分との異種用途区画は不要と判断した。」
記述例②:区画が必要な場合
「店舗部分が法27条に該当するため、住宅部分との間を令112条18項に基づき1時間準耐火構造の壁・床および特定防火設備(遮煙性能付き防火戸)で区画した。」
まとめ
異種用途区画とは、法27条に該当する特殊建築物の用途とその他の用途の間を区切る防火区画。令112条18項に定められた4種類の防火区画のひとつ。
店舗が1階のみで2階以上に床面積がなければ、法27条の条件を満たさず区画は不要。今年の課題規模では不要になるケースが多い。
区画が必要な場合は、壁・床を1時間準耐火構造にし、開口部に特定防火設備(遮煙性能付き)を設ける。スパンドレルは不要(異種用途区画だけの特徴)。
「計画の要点等」では、不要・必要どちらの場合も根拠を法27条・令112条18項と合わせて明記すると評価につながる。
References
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令 第112条(防火区画)第18項」 elaws.e-gov.go.jp
- e-Gov法令検索「建築基準法 第27条」 elaws.e-gov.go.jp
- ishiisan.com「竪穴区画って何?準耐火建築物×3階建てなら必要になる?」 ishiisan.com
※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに作成しています。実際の出題内容・設計条件は、必ず試験当日の問題文と公益財団法人建築技術教育普及センターの公式発表をご確認ください。