法規は語れるのに心地よさは語れない建築士へ|環境心理学3冊

はっきり言うけど、建築士って「法規は語れるのに、なんでその空間が心地いいのかは語れない」人、めっちゃ多いんですよ。自分もそうでした。
確認検査員やってた頃、法規に完全適合してるのに息苦しい間取りとか、逆にギリギリなのに妙に落ち着く空間とか、山ほど見てきたんですよね。
「なんとなく」で片付けるのが一番ラクなんですけど、それやってるとコンサルとかコンテンツ作りでは通用しない。ちゃんと理由を言語化できないと、ただの感想で終わる。

建築基準法が引く最低ラインと、環境心理学が扱う人が心地よく過ごせる条件の関係図

というわけで、その「なんとなく」を潰すために読んだ環境心理学の本、3冊だけ紹介します。遠回りしたくない人向けに、読む順番も書いときます。


STEP 01 / 03  —  まず全体地図
入門

『環境心理学 第2版』

羽生和紀 著/サイエンス社/2019年

最初の1冊はこれ一択。他の候補も一応見たんですけど、範囲の広さで結局これに戻ってきました。
知覚、回復環境、群集行動、住宅、職場、公共空間——環境心理学が扱うフィールド、だいたい全部乗ってます。注意回復理論みたいな基礎概念も図解と事例つきなんで、理屈だけで終わらないのがいい。ナッジや行動経済学寄りの話もちょこちょこ出てきます。

これ読む前と後で、正直しゃべり方が変わりました。「なんか落ち着きますよね」で終わらせず、「奥行きと囲まれ感のバランスが〜」って言えるようになる。
人に教える立場に回るなら、まずここ。共通言語を持ってないと、そもそも会話が成立しないんで。

とりあえず土台としてまず1冊、というならこれです。

Amazonで見る →

次は現場ごとの切り口へ

STEP 02 / 03  —  現場ごとの切り口
実践

『環境心理学(シリーズ心理学と仕事17)』

北大路書房/2017年

1冊目で土台作ったら、次はこれ。構成が現場ドンピシャで、「建築と心理学」「施設環境の心理学」「医療・福祉施設環境」「教育環境」「労働環境」って、現場ベースで章が切られてます。
理屈だけの本にありがちな、机上の空論感がない。現場の声もちゃんと拾われてるんで、「実際どうなん?」に答えてくれる作りです。

これ、研修プログラム作る人からしたら反則級です。章立てがそのままテーマ案として使えるんで、企画を一から考える手間がかなり減る。
医療施設向け、教育施設向け、労働環境向け——欲しいネタが最初から仕分けされてる状態です。

研修や講座のネタ帳としても使えるので、手元に置いておく価値ありです。

Amazonで見る →

最後は建築の言葉に戻す

STEP 03 / 03  —  建築の言葉に戻す
仕上げ

『ワークブック 環境行動学入門』

学芸出版社/2024年

最後はこれ。①②が心理学サイドの本だったのに対して、この本は著者が一級建築士。だから建築の言葉のまま書いてある。これがでかい。
心理学の本を2冊読んだあとって、正直ちょっと頭が心理学モードに寄ってるんですよ。でもこの本は建築・都市の視点から環境と人間行動を語ってるんで、変換作業なしでそのまま入ってくる。

①②で仕入れた知識が、この本読んでる途中で「あ、これさっきの話じゃん」ってバチバチつながっていく感覚があります。
順番、絶対これ最後がいいです。先に読むと、逆に①②のありがたみが薄れる気がする。

仕上げの1冊として、ここで建築の言葉に戻ってきてください。

Amazonで見る →

※本記事のリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しているものが含まれます。


結局どう読むのが正解か

①で全体地図を頭に入れて、②で現場ごとの切り口を仕入れて、③で建築の言葉に戻す。これが一番遠回りしないルートだと思います。少なくとも自分は他の順で読んでたら絶対もっと時間かかってました。

建築基準法って、突き詰めれば「これだけは守れ」っていう最低ラインを引いてるだけなんですよね。
その先にある「じゃあ人が本当に心地よく過ごせる空間って何なん?」を扱うのが環境心理学。
法規の話も心理学の話も、結局は同じ問いに戻ってくる気がしてます。

なぜこの空間はこうあるべきなのか。