木造の家の床下や天井裏をのぞくと、斜めに渡された木の棒を見かけることがある。
これが「火打ち」だ。
ふだんは目にすることもないし、名前を聞いても何のことかピンとこない人が多いと思う。
今日は、この火打ちについて、次の3つだけお話ししたい。
1. 火打ちって、そもそも何なのか
家を真上から見ると、床や屋根は四角い面でできている。
その四角い面の角のところに、斜めに1本、木を渡す。それが火打ちだ。
なぜわざわざ斜めに渡すのかというと、四角形は横から押すとひし形につぶれてしまうからだ。
でも、四角形の中に斜めの線を1本引いて三角形をつくると、もうつぶれない。三角形は形が変わらない、という中学校の図形の授業で習ったあの性質を、そのまま家づくりに応用している。
図:床組の隅角部に入る火打ち土台のイメージ
地震や台風の風は、家を横から押す力になる。
火打ちは、その力を受けても床や屋根の面がゆがまないように支える、いわば「つっかえ棒」のような部材だ。
1階の床下に入れるものを「火打土台」、2階の床や屋根の骨組みに入れるものを「火打梁」と呼ぶ。呼び名は違うけれど、やっていることは同じで、面をつぶれにくくすることにある。
2. 基本的には必要。でも、構造計算をすれば不要になる
このルールは、建築基準法施行令46条3項という条文に書かれている。実際の文章を見てみよう。
出典:建築基準法施行令第46条第3項
漢字が多くて読みづらいけれど、言っていることは意外とシンプルだ。
前半は、「木板その他これに類するもの」を「打ち付けなさい」と言っている。これが火打ちや、後で触れる厚い合板のことを指していて、要するに「原則、入れてください」ということ。
後半の「ただし」以降が例外で、「構造計算」できちんと安全だと確かめられれば、「この限りでない」、つまり入れなくていい、と言っている。
なので、まとめるとこうなる。
- 何も計算しないなら → 火打ちは必要
- 専門家がきちんと計算して、安全だと証明できるなら → 火打ちはなくても大丈夫
構造計算というのは、その家がどれくらいの力に耐えられるかを数字で確かめる作業だ。火打ちを入れなくても、床の合板を厚くして釘の間隔を細かくするなど、別の方法で同じくらいの強さを出せると分かれば、火打ちを省いてもいい、という考え方になっている。
実務メモ
2025年4月の改正で、これまで4号建築物として一部審査が省略されていた木造2階建て住宅も、2号建築物として構造関係規定を含む審査対象になった。以前は「火打ちを抜くかどうか」を設計者の判断に委ねる余地があったが、今後はその判断が審査の目に触れる場面が増える。
3. 二級建築士の製図試験では、結局どっちなのか
今年(令和8年度)の二級建築士の製図試験は、「商店街に建つ併用住宅・木造3階建て」という課題だ。
今年の試験で提出を求められる図面(要求図書)には、床や屋根の骨組みを描く「伏図(ふせず)」がちゃんと入っている。火打ちは、まさにこの伏図に描き込む部材なので、避けて通れない。
ただ、試験時間はたったの5時間しかない。専門家が普段やっているような本格的な構造計算をしている余裕は、正直まったくない。
だから試験では、「原則」の方、つまり火打ちをちゃんと描くことが求められる。「計算すれば省略できるはずだ」という理屈は法律上は正しいのだけれど、それを5時間の中で証明する手段がないので、試験では通用しない。
しかも今回は、木造3階建てという初めての出題だ。2階建てに比べて建物にかかる力も大きくなる。だからこそ、床や屋根の面をしっかり固める火打ちを、迷わず描けるようにしておきたい。
参考・出典
- 建築基準法施行令第46条第3項 e-Gov法令検索で確認する
- 床組及び小屋ばり組に木板その他これに類するものを打ち付ける基準を定める件(平成28年国土交通省告示第691号) 告示PDFを見る
- 公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和8年度二級建築士設計製図試験の課題発表」 公式ページを見る
筆者について
一級建築士・建築基準適合判定資格者・宅建士。元指定確認検査機関の確認検査員として、建築確認審査の実務に携わった経験をもとに解説しています。
※本記事の法令解説は令和8年7月時点の情報に基づいています。試験の詳細な設計条件・要求内容は必ず公益財団法人建築技術教育普及センターの公式発表をご確認ください。