豚肉消費シェア 62%→58%(2018→2026)
養豚ビル年間出荷 約120万頭
1頭あたり 423元の赤字
二度見しました。中国の「26階建てビル」、
まさかこんなことになってるとは
はい、というわけで今日は中国の話をします。「豚肉」ですよ、豚肉。地味なテーマに聞こえるかもしれないですけど、これがめちゃくちゃ面白いんです。
というのも今、中国では豚肉の値段がとんでもないことになっていて、ある市場では豚肉が生姜やニンニクより安く売られてるらしいんですよ。肉より薬味のほうが高いって、どういうことやねんと。
で、その「26階建てビル」の正体を調べていくと、これがもう、意味わからないスケールなんですよ。今日はこのビルと豚肉価格のつながりを、順番に解説していきます。読み終わるころには、「へえ、経済ってこうやって動くのか」って感覚がつかめると思います。それでは、いきましょう。
01そもそも、中国って豚肉大国なんですよ
まず前提の話から。中国は世界の豚肉消費のおよそ半分を占める、圧倒的な豚肉大国です。半分ですよ、半分。世界中で食べられてる豚肉の2個に1個は中国で消費されてる計算になります。
これ、歴史的にも根深くて、十二支の「亥(い)」って、日本ではイノシシのことですけど、中国では本来ブタを指すんです。それくらい昔から、ブタは中国の生活に染み付いた存在なんですよ。
そんな「豚肉が主役」の国で今、価格がずっと下がり続けている。2026年には、生きた豚の取引価格がこの14年間で最安値を更新しました。農家さんは豚を1頭出荷するたびに赤字になる、というレベルにまで落ち込んでます。これ、けっこう深刻な話です。
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2026年4月、生体豚の平均価格が1kgあたり8.7元(この14年間で最安値)、出荷1頭あたり423元の赤字との分析。出典:農畜産業振興機構(ALIC)海外情報
02その「ビル」の中身が、想像を超えてました
あのビルが建ってるのは、内陸の湖北省鄂州市(こほくしょう・がくしゅうし)。
畑と一戸建てが広がるのどかな景色の中に、格子状の窓がびっしり並んだ26階建てのビルがドーンと建ってる。周りの風景から完全に浮いてます。
未確認・伝聞出典を見る
「世界一高い豚小屋」という呼び方は現地の言い回しとして紹介されているものの、一次報道での確認は取れていません。
で、これが何かというと、正真正銘の養豚場なんです。オフィスビルでもマンションでもなく、中身は全部ブタ。数字だけ見ても、もうスケールがおかしいので並べますね。
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複数の海外メディアが同じ規模数値を報じている。出典:South China Morning Post/Species Unite(The Guardian記事の分析)
豚は地下1階から産業用リフトで各階に運ばれます。「1回で約40頭運べる」という具体的な数字を伝える記事もあるんですが、これは中国語報道ベースの二次情報で、英語圏の一次報道までは裏取りできませんでした。餌やりは中央制御室のボタン操作で自動化されていて、フンやおしっこも発電などに再利用されるらしいです。もう完全に「工場」の発想ですよね。
未確認・中国語報道ベース出典を見る
「1回約40頭」という搬送能力の数字は、日本語圏の二次情報で見られるものの、英語圏の一次報道では確認できていません。バイオガス発電の仕組み自体はOddity Centralで確認できます。
こういう超高層養豚ビル、実は鄂州市だけじゃなくて広東省などにも広がってます。
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Compassion in World Farmingの調査によれば、2025年時点で広東省だけで170棟以上の多層式養豚施設が確認されているとの報告あり。出典:A-Z Animals
ちょっと脱線しますが、建築の仕事をしてる人からすると、このビルは中身も気になるはずです。豚専用のエレベーターとか、豚の体重・頭数・洗浄水まで乗る床の積載荷重は、普通のオフィスビルとはまるで違う条件で組まれてるはず。
ちなみに日本の建築基準法だと、「畜舎」は特殊建築物ではなく通常の建築物として扱われるのが実務上の整理です(特殊建築物として明記されているのは「と畜場」=屠殺施設の方)。26階建ての畜舎なんて条文がまったく想定していない規模なので、日本で計画するなら相当悩ましい審査になりそうです。
03で、これがなんで「値下がり」につながるのか
ここ、経済の一番おいしいところなので、ちょっと整理します。
ものの値段って、結局は「欲しい人の数(需要)」と「売られてる量(供給)」のバランスで決まります。人気ゲームが発売直後は品薄で高値でも売れるのに、時間が経って在庫がダブつくと値下げセールが始まる。あれと同じ現象です。
ビル型養豚場みたいな超効率施設がバンバン建って、豚の生産量が一気に増えました。ところが、それを食べる人の数は、生産量の伸びに全然追いついてない。つまり「作りすぎ」の状態になっちゃったんです。当然、余った分は値段を下げてでも売るしかない。
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豚肉500g(1斤)が10元前後で取引され、生姜やニンニクと同等かそれより安い水準になっているとの現地報告。出典:上海在住のえいちゃん note
「肉のほうが野菜より安い」って、なかなかシュールな状況ですよね。
04しかも「若者の豚肉離れ」が追い打ちをかけてる
供給側が増えてるだけじゃなく、実は需要側にも変化が起きてます。いわゆる「豚肉離れ」ってやつです。
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中国の食肉消費全体に占める豚肉の割合の推移について。出典:上海在住のえいちゃん note/農畜産業振興機構(ALIC)海外情報
理由はだいたいこんな感じです。
- 健康志向:脂質の少ない鶏肉とか、牛肉を選ぶ人が増えてる
- 選択肢の多様化:都市部を中心に外食や輸入食品の選択肢が広がった
- 景気の停滞:財布のひもが固くなって、外食や高い食材への支出を抑える人が増えてる
特に都市に住む若い世代でこの傾向が強いと言われてます。供給はどんどん増えるのに、需要は伸び悩む。この「ねじれ」が、豚肉価格が長く低迷してる根本原因ってわけです。
05苦しい企業は、次は海外を狙ってる
ここまで聞くと、「豚肉安いなら消費者はラッキーじゃん」って思うかもしれません。でも、育ててる企業からすると死活問題で、豚を1頭売るたびに赤字っていう状態がすでに起きてます。
そこで経営が苦しくなった中国の養豚企業の一部が今、目を向けてるのが海外市場です。国内で売れば売るほど赤字が膨らむなら、まだ値段が保たれてる海外に活路を見いだそう、と。
もしこの流れが本格化すると、安い中国産豚肉が世界市場に出回るようになって、日本を含む各国の豚肉価格や、各国の養豚農家の経営にも影響が出てくる可能性があります。つまり、「中国だけの国内問題」に見えて、実は世界の食卓にじわじわつながってる話なんですよ。
06まとめ:豚のビルが教えてくれること
じゃあ最後、今日の話を整理しておきます。
- 中国は世界の豚肉消費の約半分を占める、圧倒的な豚肉大国
- 「土地不足」「感染症対策」「人手不足」を一気に解決するために、26階建てなどのハイテク養豚ビルが各地にできている
- 生産効率が上がりすぎた結果、豚肉が「作りすぎ」の状態になって、価格がガンガン下がっている
- 健康志向や食の多様化を背景に、若者を中心とした「豚肉離れ」も需要低迷に拍車をかけている
- 経営が苦しい企業が海外市場に目を向け始めていて、安い中国産豚肉が世界に広がる可能性もある
1つの技術革新(ハイテク養豚)が、価格の変化を通して人々の食生活を変え、しかも国際貿易にまで波及していく。これ、「技術」と「経済」と「文化」が全部つながってるのがよくわかる、いいケーススタディだと思います。
スーパーで豚肉の値段を見たら、ちょっとだけ「この裏側で、こんな大きな変化が起きてるかもしれない」って思い出してもらえたら、今日の話は成功です。それでは、また次回。
—参考・出典
- 日本経済新聞「豚肉を安くした中国ハイテク養豚 高層ビル活用、豚食文化にも異変」(2026年7月20日)
nikkei.com/article/DGXZQOGM013KZ0R00C26A7000000 - South China Morning Post「High on the hog: skyscraping hi-tech China swine farm produces 1.2 million pigs a year」
scmp.com - Species Unite「China Opens 26-Storey Pig Skyscraper, With More Under Construction」(The Guardian報道の分析を含む)
speciesunite.com - A-Z Animals「This Massive 26-Story “Pig Hotel” Houses 650,000 Animals」
a-z-animals.com - Oddity Central「China’s ‘Pig Hotels’ – Massive Multi-Storey Pork Production Facilities」
odditycentral.com - 農畜産業振興機構(ALIC)「豚肉価格が低迷する中、中国主要メディアがその要因を分析(中国)」
alic.go.jp - 農畜産業振興機構(ALIC)「中国における畜産物消費の変化 〜食肉編〜」
alic.go.jp - note「低迷する豚肉価格:中国ハイテク養豚の落とし穴」(上海在住のえいちゃん)
note.com