一級建築士「学科の試験」合格発表(令和8年度) ― 合格率26.2%は過去最高。でも大事なのはここから

令和8年9月2日(水)発表
一級建築士「学科の試験」合格率26.2%、過去最高

まずは合格された方、おめでとうございます。

この記事では、令和8年9月2日に発表された一級建築士「学科の試験」の結果を整理します。数字の出典は、試験実施機関である建築技術教育普及センターの公式発表です。

発表内容の概要

項目 令和8年度 令和7年度 増減
試験実施日 7月26日(日) 7月27日(日)
合格発表日 9月2日(水) 9月3日(水)
実受験者数 29,094人 27,489人 +1,605人
合格者数 7,619人 4,529人 +3,090人
合格率 26.2% 16.5% +9.7pt
総得点基準点 94点 88点 +6点

科目別の基準点は、計画11点・環境設備11点・法規16点・構造16点・施工13点でした。

基準点は94点まで上がっています。合格された方は「基準点が下がったから通った」のではなく、例年以上に得点を積み上げた結果として合格していることになります。

「過去最高」は何を示しているのか

合格率26.2%という数字だけを見ると、「今年は簡単だった」という理解で終わりがちです。ですが、もう少し分解して見ておく価値はあります。

①基準点は固定値ではない
総得点の基準点は「概ね90点程度」を基本水準としつつ、その年の出題難度に応じて事後的に上下へ補正される仕組みです。令和7年度は88点に下方補正、令和8年度は94点に上方補正されました。基準点が固定された絶対値ではなく可変であるからこそ、こうした振れ方が起きます。

②一年おきに振れる傾向
易しい年の翌年は難化し、難しい年の翌年は易化する、というサイクルが近年繰り返されています。令和8年度の「過去最高」も、単年の特異点というより、この振れ幅の中の一つの極値として位置づけたほうが実態に近いはずです。令和9年度は反動で難化するのではないかという見方も、資格学校の分析の中ですでに出ています。

学科試験 合格率の推移(令和4〜8年度)のグラフ

背景として、建築士を目指す人口そのものを増やしたいという制度側の意図も、一部の資格学校の分析では指摘されています。大学在学中の受験を可能にする建築士法改正が控えていることもあり、将来の建築士を確保する必要性が合格率の上昇傾向の一因になっているという見立てです。

実受験者数自体は近年減少傾向にあり、母数が減るなかで合格率だけを上げても、供給される建築士の絶対数は思うようには増えません。「過去最高」という見出しの裏には、業界全体の人材確保という、もう少し長いスパンの課題が透けて見えます。

つまり「過去最高」という数字は、その年の運の良し悪しでもなければ、試験制度が急に緩くなったわけでもありません。難度に応じた基準点の事後調整、一年おきの振れ幅、そして業界全体の人材確保という複数の要因が重なった結果の数字です。

設計製図試験に向けて

学科合格者は、令和8年10月11日(日)実施の設計製図試験に進みます。今年の課題は「ホテル」です。発表(9月2日)から試験当日までは、約39日間です。

今年は合格者数が前年から3,000人以上増えており、製図試験に臨む母集団もそれだけ大きくなります。製図試験の合格率は例年30〜35%程度で推移しています。

数字の話はここまで、あとは製図試験だけ

正直なところ、ぶっちゃけ、この手の話は合格した本人にとってはどうでもいい話です。基準点がどう補正されようと、来年が難化しようと、制度がどう動こうと、今年学科に合格したという事実は変わりません。

過去最高の合格率だったことも、その背景にある制度的な事情も、製図試験の答案には一切関係ありません。

そしてここが一番言いたいことなのですが、製図試験に受かる人のメンタルは、だいたいこの感覚に近いです。合格率が何%だったか、周りが何人受かったか、来年が難化するかどうか。こうした数字は、自分ではどうにもコントロールできません。コントロールできないものを気にしている時間は、コントロールできる自分の手を動かす時間には変わりません。

製図試験で最後まで残る人は、他の受験生の数や試験制度の傾向を気にするのをやめて、目の前の課題文と自分のエスキスだけを見ています。今年の受験者がどれだけ増えようと、自分が引く一本の線の精度は変わりませんし、自分の答案の完成度も変わりません。数字は環境の話であって、自分の実力の話ではないからです。

結局のところ、この記事で書いてきた基準点の補正メカニズムも、一年おきの振れ幅も、業界の人材確保という背景も、10月11日の試験当日には何の意味も持ちません。持つのは、その日までにどれだけ自分の手を動かしたか、それだけです。数字はどうでもいい。ベストを尽くすこと。それだけを考えて、残りの日数を過ごしてください。そうすれば、きっといい結果が出るはずです。