お勤めご苦労さまです。いしいさん(@ishiisans)です。
いつもこのブログを読んでいただきありがとうございます。
先日、こういうツイートをしました。
4割不足は確信犯!
— 建築士いしいさん (@ishiisans) September 7, 2021
簡単に言っちゃうと、鉄筋が不足してて、擁壁が壊れちゃった。ということです。
ということで、今回は、
擁壁は建築基準法的にはどうなっているの?について解説していきたいと思います。
結論としては、
・2mを超える擁壁であれば、確認申請が必要。
・2mを超える擁壁でも、宅地造成等規制法等の許可を受けたものは、確認申請が不要。
です。
では、さくっと解説していきます。
擁壁の確認申請は?
法88条→令138条第1項の順番に見ていくと、確認申請が必要かどうかわかります。
では、まずは法88条(工作物への準用)を見ていきましょう!
法第88条(工作物への準用)
煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で政令で指定するもの及び昇降機、ウォーターシュート、飛行塔その他これらに類する工作物で政令で指定するもの(以下この項において「昇降機等」という。)については、第3条、第6条(第3項、第5項及び第6項を除くものとし、第1項及び第4項は、昇降機等については第1項第一号から第三号までの建築物に係る部分、その他のものについては同項第四号の建築物に係る部分に限る。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条から第7条の4まで、第7条の5(第6条の4第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第8条から第11条まで、第12条第5項(第三号を除く。)及び第6項から第9項まで、第13条、第15条の2、第18条(第4項から第13条まで及び第24項を除く。)、第20条、第28条の2(同条各号に掲げる基準のうち政令で定めるものに限る。)、第32条、第33条、第34条第1項、第36条(避雷設備及び昇降機に係る部分に限る。)、第37条、第38条、第40条、第3章の2(第68条の20第2項については、同項に規定する建築物以外の認証型式部材等に係る部分に限る。)、第86条の7第1項(第28条の2(第86条の7第1項の政令で定める基準に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、第86条の7第2項(第20条に係る部分に限る。)、第86条の7第3項(第32条、第34条第1項及び第36条(昇降機に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、前条、次条並びに第90条の規定を、昇降機等については、第7条の6、第12条第1項から第4項まで、第12条の2、第12条の3及び第18条第24項の規定を準用する。この場合において、第20条第1項中「次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準」とあるのは、「政令で定める技術的基準」と読み替えるものとする。
解説
ながーい条文ですね~。でも、言いたいことは、赤でマーカーを引いたところです。
そこを抜粋すると、
煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で政令で指定するものについては、第6条の規定を準用する。
となります。
そして、
・政令で指定するもの=令138条
・第6条=確認申請
を示しています。
つまり、
令138条に書いてある擁壁は、確認申請が必要。
となるのです。
では、どういう擁壁であれば、確認申請が必要となるのか?令138条を見ていきます。
確認申請が必要な擁壁
令138条(工作物の指定)第1項
煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で法第88条第1項の規定により政令で指定するものは、次に掲げるもの(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関するものその他他の法令の規定により法及びこれらに基づく命令の規定による規制と同等の規制を受けるものとして国土交通大臣が指定するものを除く。)とする。
一 高さが6mを超える煙突(支枠及び支線がある場合においては、これらを含み、ストーブの煙突を除く。)
二 高さが15mを超える鉄筋コンクリート造の柱、鉄柱、木柱その他これらに類するもの(旗ざおを除く。)
三 高さが4mを超える広告塔、広告板、装飾塔、記念塔その他これらに類するもの
四 高さが8mを超える高架水槽、サイロ、物見塔その他これらに類するもの
五 高さが2mを超える擁壁
解説
確認申請が必要となる具体的な工作物が一号~五号に書かれています。
で、擁壁は、五号です。
ここで気をつけるのは、ズバリ、起算点です。
2mを超える擁壁となっていますよね?
つまり、
2mを超える擁壁であれば、確認申請が必要なのです。
逆に言うと、2mを超えない擁壁であれば、確認申請は不要なのです。
【注意!】2mを超える擁壁でも確認申請がいらない場合がある
上記で、2mを超える擁壁であれば、確認申請が必要となりましたよね?
実は、2mを超える擁壁でも確認申請が不要な場合があります。
それは、ズバリ、法第88条第4項です。
第1項中第6条から第7条の5まで、第18条(第1項及び第25項を除く。)及び次条に係る部分は、宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)第8条第1項本文若しくは第12条第1項、都市計画法第29条第1項若しくは第2項若しくは第35条の2第1項本文又は津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)第73条第1項若しくは第78条第1項の規定による許可を受けなければならない場合の擁壁については、適用しない。
解説
ポイントは青でマーカーを引いたところです。
そこだけ抜粋すると、
第6条は、宅地造成等規制法、都市計画法、津波防災地域づくりに関する法律の規定による許可を受けなければならない場合の擁壁については、適用しない。
となります。
つまり、
確認申請は、
・宅地造成等規制法
・都市計画法
・津波防災地域づくりに関する法律
この3つのいづれかの法律で許可を受けた擁壁については、不要なのです。
もっと簡単に言うと、
建築基準法ではなくて、他の法律でわざわざ許可を得ている擁壁は、3mだろうが10mだろうが100mだろうが、確認申請は不要なのです。
さいごに
以上、【起算点注意!】確認申請が必要な擁壁とは?【建築基準適合判定資格者が解説!】
結論は、
・2mを超える擁壁であれば、確認申請が必要。
・2mを超える擁壁でも、宅地造成等規制法等の許可を受けたものは、確認申請が不要。
です。
ちなみに、ツイートした擁壁は、写真を見る限りでは、2mを超えていると思われます。
なので、確認申請はしているはず。
でも、施工不良で鉄筋が4割も不足していたとのこと。
きっとバレなければいいよ的な感じで造られたのかもしれません。
もしくは、めちゃくちゃピンハネされたのかもしれません。
ぶっちゃけ、こういう施工は氷山の一角です。
いたるところにヤバい建築物はあります。
これは、技術的な問題もあるでしょうが、一番はお金なのだと思います。
安く安くしようという考えが施工不良を生み出しているのです。
きちんと相応の対価が支払われれば、施工不良はおのずと減っていきます。
だれもしたくて施工不良を起こしているわけではないからです。
なので、安けりゃいいという考え方を捨てましょう!
自分だけよければいいという考えを捨てましょう!
そして、どうしら、みんなが良くなる・嬉しくなるかを考えることが大事です。
そうすれば、調和がとれ、必要な対価を喜んで支払うようになるものです。
結果、みんなの思いが詰まった素晴らしくて安全な建築物が世の中にあふれてくるのです。
なんだか素敵ではないですか?ワクワクしてきませんか?
こういう建築物が増えていけば、間違いなくその地域、そして日本は明るく希望に満ちた国なっていくでしょう!
こうなるように、ぼく自身も日々頑張っていきたいと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。
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