「併用住宅」と「兼用住宅」の違いを解説|二級建築士製図試験対策

Architecture / Exam Glossary

「併用住宅」と「兼用住宅」、
何がどう違うの?

二級建築士の製図試験を受ける人へ

二級建築士の試験勉強をしていると、「併用住宅」と「兼用住宅」という、似ているけど違う言葉がよく出てくる。読み方も似ているし漢字もほとんど同じだから、最初はごちゃごちゃになる人がほとんどだと思う。

今年の試験の課題名は「商店街に建つ併用住宅(木造3階建て)」だ。この「併用」という言葉には、実はちゃんと意味があって、設計の方向性にも関わってくる。今回はこの2つの言葉の違いを、できるだけやさしい言葉で説明していきたい。

01

いちばん簡単な見分け方は、家の中でつながっているかどうか

結論から言うと、見分け方はこれだけだ。

兼用住宅は、家の中からお店や事務所にそのまま歩いていける建物のこと。併用住宅は、家の中からお店や事務所に直接は行けない、壁や入口できっちり分かれている建物のことだ。

兼用住宅と併用住宅の断面イメージ比較
Fig.3 — 兼用住宅と併用住宅の断面イメージ比較

イメージで言うなら、兼用住宅はリビングの奥にお父さんの仕事部屋があって、リビングから直接そのドアを開けて入れるような家。家族の生活空間の延長として仕事スペースがある、という感じだ。一方の併用住宅は、1階が完全に独立したお店で、2階・3階が住宅になっているような建物。お店の入口とお宅の入口は別々で、お店からそのまま住宅部分に上がっていくことはできない。マンションの1階に入っているコンビニと、上の階に住んでいる人との関係に近いイメージだ。

02

兼用住宅は、ルールが細かく決まっている特別な言葉

「兼用住宅」は、実は建築基準法施行令第130条の3という法律の条文で、しっかりルールが決められている言葉だ。簡単に言うと、次の3つの条件を守らないと「兼用住宅」とは認められない。

  • 建物全体の半分以上を住宅として使っていること
  • お店や事務所の種類が、法律で決められたもの(事務所、パン屋さん、美容院、学習塾など)であること
  • お店や事務所の部分の広さが、合計で50㎡以下であること

なんでそんなに細かいのかというと、理由はシンプルだ。兼用住宅は、本来お店や会社を建てられない閑静な住宅街、いわゆる第一種低層住居専用地域の中にも建てることが許されている、特別な建物だからだ。

たとえるなら、学校のルールでは私服禁止だけど、体育祭の日だけは特別に応援用のTシャツを着てもいい、というような例外的に許される特別ルールに近い。だからこそ「家の延長として使うごく小規模な仕事場であること」という厳しい条件がついているわけだ。

03

併用住宅は、もっと自由なふつうの言葉

それに対して併用住宅には、50㎡以下のような細かい広さのルールはない。お店の部分と住宅の部分が、それぞれ独立した建物としてしっかり分かれている、もっと一般的な建物のことを指す言葉だ。

この違いから、実際にできることも変わってくる。併用住宅はお店の部分だけを他の人に貸すことができるが、これは住宅と関係なく独立しているからこそ可能なことだ。兼用住宅は家族の生活と一体になっているので、基本的に自分や家族が使うことが前提になる。また、併用住宅は店舗が大きくなりやすい分、閑静な住宅街には建てられない、つまりお店が建てられる場所でないとダメ、という制約も出てくる。

兼用住宅 併用住宅
家の中で行き来できる? できる できない(分かれている)
ルールの厳しさ 法律(施行令130条の3)で細かく決まっている 特に細かい決まりはない
お店の広さの上限 50㎡以下 上限なし
他の人に貸せる? 基本的にできない できる
閑静な住宅街に建てられる? 条件を満たせば建てられる 建てられない

04

今年の試験で、なぜこれが大事なのか

今年の課題名はわざわざ「兼用住宅」ではなく「併用住宅」という言葉を使っている。これは単なる言葉の選び方ではなく、設計するときの大事な前提を教えてくれているのだと思う。

ひとつは、お店と住宅は行き来できないように設計するという点。「併用住宅」という言葉を使っている以上、お店の部分と住宅の部分は行き来できないように分けて設計するのが基本になる。もし「お母さんの部屋から直接お店の中に入れる」というような間取りにしてしまうと、それは兼用住宅っぽい考え方になってしまい、課題の前提とズレてしまう可能性がある。お客さんの通る道と、住んでいる家族の通る道をきっちり分けるという設計のルールは、実はこの「併用住宅」という言葉そのものから来ている、ということを覚えておくとよさそうだ。

もうひとつは、お店の広さに50㎡の縛りがないという点。兼用住宅なら「お店の部分は50㎡以下」という制限があるが、併用住宅にはこの制限がない。商店街に建つお店なら、お客さんの席や厨房、テラスなど、ある程度の広さが必要になるはずで、「併用住宅」という言葉が使われているのは、お店をしっかりした広さで計画してよい、というメッセージでもあると思う。

最後に、閑静な住宅街ではないということの裏付けにもなる。兼用住宅の最大の特徴は、閑静な住宅街でも建てられることだ。逆に言えば、「併用住宅」という言葉を使っているということは、この建物が建つ場所はもともとお店を建てても問題ないエリアだ、ということを意味している。商店街にお店が建っているのは当たり前のことだけれど、言葉の選び方からもそれがちゃんと裏付けられている、という見方ができる。

05

まとめ

兼用住宅は家の中で行き来できて、ルールも法律で細かく決まっていて、お店の広さは50㎡以下、他人に貸すことは基本的にできず、条件を満たせば閑静な住宅街にも建てられる。併用住宅はその逆で、行き来はできないように分かれていて、広さの上限はなく、お店だけを他人に貸すこともできるが、閑静な住宅街には建てられない。

今年の課題が「併用住宅」を選んでいるということは、お店と住宅をしっかり分けて、それぞれに見合った広さで計画することが、最初から求められているということになる。エスキスを始める前に、この言葉の意味を正しく理解しておくと、設計の方向性がぐっとブレにくくなるはずだ。

References

※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。実際の出題内容・設計条件は、必ず試験当日の問題文と公益財団法人建築技術教育普及センターの公式発表をご確認ください。